金属の塊ではなくプランク定数が基準に
キログラム(kg)
キログラムの定義が変わった!
2018年11月に開催された第26回国際度量衡総会において、「キログラム」を含む4つの基本単位の新しい定義が採択され、2019年5月20日から適用された。「キログラム」の定義は、原器という一つの物から切り離し、変化しない物理基礎定数「プランク定数」と結びつくことになった。
1795年、「キログラム」は質量の単位として誕生した。0℃、1Lの水の質量であるとしたが、水は蒸発したり温度によって体積が変化したりする。そこで精度の高い「国際キログラム原器」がつくられ、1889年以来130年もの間、質量の唯一の基準だった。
直径と高さが約39mmの円筒形分銅で、安定した素材のプラチナ90%とイリジウム10%の合金でつくられており、二重ガラス容器に入れて厳重に保管されていた。しかし、1991年に洗浄後、詳しく計測をすると1億分の5キログラム(=50マイクログラム)、指紋で付く油脂1個分ほど減少していた。科学技術の進歩で求められる測定精度が上がり、これでは計測の基準には向かなくなったのだ。
そこで「キログラムは、プランク定数hを正確に6.62607015×10-34Jsと定めることによって設定される」と定義した。プランク定数は量子力学の基本定数である。直感的には非常にわかりにくい定義だが、例えば、光子のエネルギーと、特殊相対性理論によるエネルギーと質量の等価性から、質量を表すことができる。これによって、一つの原器に頼るのではなく、いろいろな方法で質量を計測できる可能性が生まれた。
単位の定義が変わっても、急に体重が軽くなったり重くなったりするわけではない。日常生活には全く影響はないレベルの精密さでプランク定数は決められている。現時点では実用的な質量の測定方法が大きく変わることはないが、将来は技術の進歩によって広範囲で質量の精密な測定が可能になると期待される。