なぜコロナ禍の2020年に9000人も死亡者が減ったのか

超高齢社会の常として、最近は毎年2万人ぐらいずつ死亡者数が増えていた日本で、2020年は前年比で約9000人も死亡者が減ったのです。これは一体、どうしたことでしょうか。

私が高齢者医療の現場で数多く見てきたのは、インフルエンザへの感染を「発端」として亡くなるケースです。毎年3000人から6000人の死亡者が出るのですが、「新型コロナ関連死」が登場して以降、「インフルエンザ関連死」は激減しました。言い方を換えれば、新型コロナで亡くなった方々のなかには、インフルエンザで亡くなっていた可能性の高い方々も多数含まれるということです。

新型コロナで亡くなった人が、2020年2月~2021年4月の1年2カ月で約1万人。例年1年間にインフルエンザで亡くなる人も約1万人。ついでに言うと、風邪をこじらせて亡くなる高齢者は毎年1万~2万人います。「新型コロナは怖くない」と言うつもりはありません。ただ「もっとも怖い感染症である」と決めつけることには賛同できないのです。

有害なのにCMが流され続ける「アルコール飲料」

真面目にテレビを信じている人が馬鹿を見るというのは、やはり考えものです。本書に限らず、私は昔から一貫して、テレビの「悪意」を批判してきましたが、同時に、テレビに正義感(必ずしも「正義」ではありません)があることも認識しています。

テレビの正義感は、およそ「身体に良い」というテーマで発揮されます。たとえば、今朝、私は珍しくテレビをつけました。すると、ワイドショーが特集していたのは「歯をしっかり正しく磨きましょう」というテーマでした。確かに、歯はしっかり磨いたほうが良い。私も賛成です。

ではなぜテレビは、タバコと同じように、身体に悪影響を及ぼすことが科学的に検証されているアルコールについて「飲まないほうが良い」と、正義のメッセージを出さないのでしょうか。

2005年に「アルコールの有害な使用に起因する公衆衛生問題に対する決議」を採択して以降、WHOは加盟国に対して、アルコールの摂取による弊害を減らすための活動を求めています。そして2010年に採択された「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」では、CMなどの広告についても規制を行うべきであるとうたわれました。

居酒屋で乾杯する多くの人々の手とマグビール
写真=iStock.com/taka4332
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この流れを受けて、欧米諸国ではアルコール飲料に関するテレビCMの規制が進みましたが、日本では相変わらず、というよりも、昔に増して、ビールをぐびぐび、日本酒をキュッと引っ掛けるテレビ・コマーシャルが続いています。