心と体の健康には、腸が深く関係している。順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「便秘や下痢、うつ病も腸内環境の悪化が一因となっている。腸は不安やストレスに敏感に反応するため、食生活を見直して『腸活』をはじめてほしい」という――。

※本稿は、小林弘幸『腸を整えたければバナナを食べたほうがいいこれだけの理由』(アスコム)の一部を再編集したものです。

腸の絵を描いた紙を腹部に当てる人
写真=iStock.com/LightFieldStudios
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今、なぜ腸活をしなければならないのか

「腸は、第2の脳」「腸内環境が乱れると免疫力が落ちて、病気にかかりやすくなる」。体や心の健康に腸が重要だということが、昨今語られるようになってきました。

しかし、そのような情報が広まってきたにもかかわらず、特に最近、便秘や下痢など、腸の不調からくる、体や心の悩みを抱えている人が増えているように感じます。

その原因の1つとして、やはりコロナ禍における生活環境の変化があげられます。コロナ禍における激しい生活環境の様変わりや先の見えない情勢などにより、私たちはこれまで以上に、目に見えないストレスにさらされながら生きています。

そして腸は、神経やホルモンなどによって脳と密接につながっているため、環境の変化や不安によるストレスに敏感に反応してしまう臓器です。そのため、時代の波に翻弄ほんろうされる今、腸は想像以上にヘトヘトになっていると考えられます。

メンタルとともに、肉体的な変化も腸に大きく関係しています。今、長引くコロナ禍の影響で、筋力が大きく落ちていることが考えられます。

厚生労働省が2021年3月に発表した「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査結果(報告書)」によると、新型コロナウイルス感染症の感染拡大前と比べて運動量が減ったと回答した割合は約4割に及びます。

運動と腸はどこか無関係のように感じますが、お腹の中を、背中から太ももの付け根にかけて斜めに通っている腸腰筋は、腸が便を押し出す働きを助けています。ほかにも、さまざまな筋肉が腸の活動にかかわっているのです。

日本人は腸によくない生活を続けてきた

そもそも、コロナ禍以前から、日本人は腸によくない生活をしていたようです。その1つが、座りすぎです。世界20カ国・地域の成人を対象に、平日の総座位時間を調べたところ、日本人の中央値は1日420分(7時間)。全体の平均中央値である1日300分(5時間)より、2時間も長かったと2011年にシドニー大学の研究者が発表しています。

少し古いデータですが、まわりの方々の働き方を見る限り、さほど状況は変わっていないように感じます。座った状態が長いと、糖尿病、肥満になる危険性が高まる、発がんリスクや死亡リスクが高まるなどという研究結果が出ていますが、座っている時間が長いのは、腸にもよくありません。

腸内環境の乱れを引き起こす原因となる便。その便を出す蠕動運動が、座ったままの姿勢が長いと、滞ってしまう危険性があるからです。普段から腸が疲れていたのが、このコロナ禍でのストレス増加、運動不足によって、状況が悪化した方も少なくないだろうと想像できます。