相手の行動を真似ることで好感度を高める「ミラーリング」

【ミラーリング/mirroring】
ミラーリングとは、人間が自分と同じ仕草・行動をする人は仲間と認識してしまう習性を利用しています。鏡のように相手の行動を意図的に真似ることで、顧客との信頼関係を築こうとするものです。
初対面のお客様から共感を得るための「 ミラーリング」
初対面のお客様から共感を得るための「ミラーリング」(出所=『決定版 営業心理術大全』より)

ミラーリングはNLP(神経言語プログラミング)の代表例の1つとして紹介されます。知られているのは、

●飲み物に手を伸ばしたタイミングで自分も飲み物を飲む
●相手がアゴに手をもっていったら、自分もアゴに手をやる
●お客様が資料を見たら、自分も一緒に見る

といったテクニックです。ミラーリングの本質は「類似性の法則」とも言われ、自分と共通点の多い人に人は好意を抱きやすいという性質を活用したものです。うまくできれば相手に「この人は仲間だ」といった好印象を与えることができます。

お客様の身振りや動作を鏡合わせのように真似ることですが、やりすぎに注意です。まったく同じタイミングで同じような動きを行うと、「この営業はこちらの真似をしている。なんだか気持ちが悪い」と不信感を持たれてしまうことになります。これでは本末転倒になってしまいます。

「どちらの出身ですか?」で一気に打ち解けることも

ミラーリングはお客様の動作を真似するだけではありません。お客様との会話から共通点を見つけ、合わせていくといった方法もあります。例えば、自分と同郷の人に会うと、それだけで一気に距離が縮まる感じがします。

私は群馬県に住んでいますが、都会で“北関東の人”に会うと仲間意識を持つものです。これはミラーリングの応用版とも言えます。以前、生命保険のトップ営業とお会いした時のことです。若い方だったのですが、イントネーションになまりを感じました。気になってこのように質問しました。

【私】「なまりがあるようですが、どちらの出身ですか?」
【トップ営業】「私は栃木なんですよ」
【私】「栃木ですか、私は群馬県なのでお隣ですね」
【トップ営業】「それじゃ、お仲間ですね」
【私】「そうですね」

これで一気に打ち解けました。しばらくいろいろな話をしているとき、このトップ営業がネタをバラしてくれました。

【トップ営業】「実を言うと、なまらないで普通に話もできるんです」
【私】「えっ! そうなんですか?」
【トップ営業】「菊原さんが群馬県出身だと知って、あえて使ってみました」
【私】「よく使うテクニックなんですか?」
【トップ営業】「はい、お客様の情報が手に入ればやります」

また大学は関西だったため、お客様が関西だと知れば“関西弁”を使うと言います。「さすがトップ営業だな」と思ったのです。

これはミラーリングの上級のテクニックです。もしあなたがいろいろな地域に住んでいたのでしたら、使う言葉をお客様に合わせることも可能です。

また趣味やスポーツネタなどで合わせていってもいいでしょう。ミラーリングは行動を真似するだけでなく“相手に寄り添うことを意識する”ということがポイントになります。方言に限らず、話し方のペース、会話のテンション、笑うタイミングを少し合わせるようにするだけでも効果があります。いろいろなミラーリングを使い、お客様との距離を一気に縮めてください。

・POINT
相手に寄り添う気持ちで接してみる


面談するお客様の情報が分かるときは、服装や小物も合わせてみる。色使いやファッションが近い人に親近感を持つ。