人は完成されたものより、未完成のものに興味を引かれる

【ツァイガルニック効果/zeigarnik effect】
ツァイガルニック効果とは、人間の記憶において「未完の課題についての記憶は、完了した課題についての記憶より想起されやすい」という現象のことを言います。簡単に説明すると、「人は完成されたものより、未完成のものに興味を引かれる」というものです。
じらし作戦で印象度を上げる「 ツァイガルニック効果」
じらし作戦で印象度を上げる「ツァイガルニック効果」(出所=『決定版 営業心理術大全』より)

うまくいった過去の恋愛よりも、片思いで終わってしまった相手の方が何年経っても忘れられない。そのような経験がある人もいるかもしれません。知人が「高校生の時にフラれた彼女のことがいまだに忘れられない」とよく言っています。成就しない恋は記憶に残るものです。過去を美化しているとも言えますが、これはツァイガルニック効果の1つです。

戦国大名では徳川家康や豊臣秀吉より織田信長のほうが人気がありますし、幕末の志士では大久保利通より坂本龍馬のほうが魅力的と感じます。「志半ばで倒れたあの人がもし生きていたら……」と想像を掻き立てられるからでしょうか。このように人は完成されたものより未完成なものに興味を引かれるのです。地味で目立たないタイプだとしても、ツァイガルニックテクニックをうまく活用することで、お客様にインパクトを与えることが可能になります。

「その詳細ですが…」で話を中断されると余計に気になる

経営者が集まる勉強会に参加した時のことです。1人の中年男性の方と名刺交換をさせて頂きました。見る限り特徴がなく、いわゆる“パッとしないタイプ”の典型のような人です。その男性とこんなやり取りをしました。

【男性】「以前から部材がうまく調達できず困っていましてね」
【私】「そういった話をいろいろなところから聞きます。困っている人が多いですね」
【男性】「そうなんです、当社も困っていましてね。ただ少し改善されてきました」
【私】「どう改善されたのですか?」
【男性】「実は特別なルートがありましてね。その詳細ですが……」

といったところでスマホに連絡が入ったようで、席を立ちます。10分程度して戻ってきました。その間“その詳細”について知りたくて、たまりませんでした。他の人との会話が上の空になるくらい気になったのです。この会では10人前後の人と話をしましたが、結局、この男性が一番印象に残ったのです。

もし「詳細はこうこうこれです」とスッと話が進んだらどうでしょうか? おそらく、ここまで印象には残らなかったと思います。あれが実際は、電話は鳴っておらず、テクニックだった……、とすれば「さすが!」としか言いようがありません。