「修造」の熱烈なオファーでピクスタへ

それまでは特に“自分がやりたいことは何か”などと考えることなく、流れのままに生きてきた。20代で、大学の交換留学プログラムで日本に来てから、日本の漫画・アニメにハマり「新刊がすぐに読める環境にいたい」「行きたいときにコミケに行きたい」と日本に残ることを決めたのも、なんとなく流れに任せての選択だった。

その後リクルートに転職してWeb広告の制作・営業の経験を積んだり、その経験を生かしてWeb広告の運用会社を起業したりもしたが、結局同じ問いに戻ってきてしまう。

「これって本当に私がやりたいことなのかな」

2社での勤務、起業と経験しても出ない答えを探そうと、その次の転職には、はじめて自分の軸を整理してから挑んだ。

「軸は3つ。これまでの経験を生かせる環境であること、柔軟にいろんなチャレンジができる社風であること、経営陣の近くでビジネスを学べる環境であることでした。やがて出合ったのが、写真や動画などデジタル素材のオンラインサイト「PIXTA」を運営するピクスタでした」

そのとき実はもう1つ、3つの軸に沿う会社から内定をもらっていた李さん。しかし当時の人事部長が、あだ名が「修造」の熱意溢れる人で、「ぜひ! あなたと! 一緒に働きたいんです!」と熱く説得を続けたことで、最後は決めたそうだ。

「条件が揃っているなら、より求められている方に進もうと思ったんです」

写真=ピクスタ提供

みんなが撮りたいのは自然な“自分らしい”写真

2015年に入社し、PIXTA事業のWebマーケティングを担当。半年後には新規事業の責任者に抜擢された。仕事内容は、「出張撮影サービス」の立ち上げ。さっそく情報収集を始めると、ユーザーの求めていることと市場にある大手の写真サービスの間に大きなズレが生じ始めていることに気づいた。

「誰もがスマホを持つようになりSNSが流行ったことで、みんなが普段から当たり前に、自然光を生かしたお洒落な写真をたくさん見ている。クリエイティブに関する目も肥えてきていて、“良い”と感じるものが変わってきていると感じました」

スタジオで撮った写真は陰影がハッキリとついた、表情もかしこまったものになりがちだが、より自然な雰囲気の“自分たちらしい写真”を撮りたい人たちが増えている。それは七五三などの家族写真でもそうだ、と。

「そのギャップを埋めていければ、業界に風穴を開けられるのでは」と李さんは考えた。