なぜ、政治家は最初から旧統一教会と手を切ると言えなかったのか。元信者でジャーナリストの多田文明さんは「旧統一教会の側についておかないと、選挙においてどんな組織的な妨害工作を受けるかわからない恐怖心がある。私もかつて教団の責任者の命令で、故筑紫哲也さんがキャスターを務めた番組の放送局に対して組織的にクレーム電話をかけた」という――。

※本稿は、多田文明『信じる者は、ダマされる。』(清談社Publico)の一部を再編集したものです。

操り人形を操る手元
写真=iStock.com/SvetaZi
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なぜ、政治家は「関係を断ちます」と明言できないのか

激しい言葉で威圧されたり、脅されたりすれば、当然恐怖心を抱きます。しかし、こんなことをしたら、すぐに警察に通報されて逮捕されることになるでしょう。したがって、巧みな者たちは、直接的ではないかたちで恐怖心を与えるような言葉を発します。

まさに、旧統一教会で教えられる「教えに背いた行動をすると、地獄の地獄に行く。悪霊がとりついて事故にあう、病気になる、家族に不幸が訪れる」は、マインドコントロールをする言葉といえます。

いま、政治家と旧統一教会のつながりが次々に明らかになってきています。なかには、旧統一教会の関連団体のイベントに参加し、信者の前で教団の活動をほめ称えるような話をする人もいます。すでに教団の関連団体から選挙協力も受け、教団の組織票の配分まで受けていた議員の話まで出てきています。

そのなかには、過去に霊感商法の手法で物品を売り、多額の献金をさせて家庭崩壊までいたらせてしまうような活動実態があることを知りながらも、今後も教団関連の団体からの支援を受けていくかについては、一部の政治家は「慎重に検討する」「軽々けいけいに答えることはできない」と答えた人もいます。

なぜ、きっぱり「教団との関係を断ちます」「二度とかかわりません。手を切ります!」と言えない人が多いのだろうか。そう思われている方も多いでしょう。

ここには二つの恐怖心で教団に支配されていることがあると思っています。元信者の私の目には、歯切れの悪い言葉を発する議員たちの姿が、どうにも旧統一教会の教えに疑問を持ちながらも、長年、教義にどっぷりハマってしまったために、なかなか脱会し切れない信者の姿に重なって見えてならないのです。

先にも述べたように、信者は教団の教えに背いた行動をすれば、「地獄に行く」「悪霊にとりつかれる」など気づかぬうちに恐怖心を植えつけられ、行動を支配されています。もしかすると、議員たちも知らないうちに不安と恐怖心を旧統一教会に抱かされ、毅然きぜんとした態度がとれない可能性があります。