ようやく支援ができる、よしここからが本番だということで、官民合同の支援チームを組織し、結果的には3年間で約5000事業者を訪問、うち要望のあった1400の事業者を支援することができました。私はこの経験を通して、腹落ちした経営者はすごい意欲や行動力を発揮するのだと、中小企業の経営者は本来そうした力を持っているのだと実感しました。
そして、これは被災地に限らず全国の中小企業経営者に共通するのではないかと思ったのです。同時に、事業再構築には対話と傾聴を大事にする「課題設定型」こそが必要なのだと気づきました。そこで現職に着任後、この伴走支援の全国展開に取り組み始めたのです。
時代に合わせて変革していく力が求められている
――今、中小企業の経営者にいちばん伝えたいことは何でしょうか。
「変革への挑戦」です。経営や経済環境が激変している現代にあっては、経営者自身が変革に挑まなければ中小企業は生き残れません。
しかし、実は日本は世界でも類を見ないほど多くの老舗企業が存在する「長寿企業大国」でもあります。その多くは時代に合わせて自己変革をしながら、戦争や災害などの危機を乗り切ってきました。本来、大企業にはない中小企業の強みは、自由度が高くイノベーティブであるという点です。長寿企業は、危機に際してそうした力を発揮してきたからこそ今があるのではないでしょうか。
変革や事業再構築のいちばんの主役は経営者とその企業自身です。私は「成功させる力はあなたたちの中にある」と訴えたい。自身の持つ潜在的な力に気づいて、そしてぜひ発揮していっていただきたいと思います。私たちも全力で支援していきます。
(構成=辻村洋子)