自立して「稼ぐ力」を取り戻してもらう
――コロナ禍で体力を失った企業への支援についてはどうでしょうか。
中小企業の倒産件数は、コロナ前と比較すると低水準ですが、コロナ禍の影響で徐々に増加傾向にあります。政府もさまざまな資金繰り支援を行ってきましたが、今後はそうした、いわゆる「コロナ融資」の返済が課題になってくるでしょう。これに対しては、借り換えなどで返済期間を長期化し、その間に徐々に事業を回復させていけるよう支援していく予定です。
しかし、目先ではそうした支援を行いながらも、私は最終的には中小企業が自ら事業を再構築していける、すなわち「稼ぐ力」を取り戻していけるような支援が必要だと考えています。生産性向上や差別化を後押ししうる支援ということですね。
現在も事業再構築のための補助金制度はありますが、対象はコロナ禍で売り上げが減った企業です。今後はそうした企業にとどまらず、GX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)、衰退業種からの転換などに挑戦する企業のインセンティブになるような制度に改善していきたいと思っています。
高齢な経営者は「現状維持」になりがち
――中小企業経営者の課題とはなんでしょうか。
有識者や経営者の方々との意見交換では、3つの課題が指摘されました。第一の課題は、中小企業の経営者は現状維持思考が強いということ。これは、経営者の高齢化や長期のオーナー経営などが大きな要因になっています。
2022年の中小企業白書によると、中小企業の経営者の年齢はどんどん高齢化しています。
2000年には経営者年齢のボリュームゾーンは「50~54歳」で20.3%でしたが、2020年には「60~64歳」(15.0%)、「65~69歳」(14.7%)、「70~74歳」(14.6%)に分散してしまいました。
これの何が問題かというと、経営者が高齢化すればするほど、新たな事業へチャレンジする風土が企業内で失われる傾向があることです。
試行錯誤(トライアルアンドエラー)を許容する組織風土があるかを尋ねた設問では、経営者の年齢が30代以下の中小企業では「十分当てはまる」が22.5%、「ある程度当てはまる」が50.0%で合わせて7割を超えますが、80代の企業では「十分当てはまる」が10.1%、「ある程度当てはまる」が34.9%にとどまり、全体の5割に届きません。シニア経営者には改革に意欲的な方も大勢いますが、全体としては現状維持思考から脱却できていない様子が見てとれます。
一方で、若い後継者の中には、事業承継の際に新しい取り組みに挑戦したいという人が4割以上もいます。企業の成長には変革が欠かせず、そのためには経営者の世代交代や若返りが重要です。私たちも若い後継者の変革や挑戦を後押ししていくつもりです。