今年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は、これまで25話連続でツイッター世界トレンド1位となっている。なぜこれほどSNSで話題になるのか。書評家の三宅香帆さんは「『みんなが想像する大河ドラマ』『みんなが想像する歴史』『みんなが想像するいつもの俳優たちのキャラクター』ではないからこそ、話題を集めている」という――。
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ツイッタートレンド世界一になる異例の大河ドラマ

日曜夜は、できるだけ予定を入れないようになった。なぜなら家で大河ドラマを観たいから。

12月の最終回を目前にして2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』がSNSで話題沸騰中である。

実は視聴率でみると、最新回第41話(10月30日放送)は11.3%と、はっきり言ってそこまで高くない数字だった。しかしSNSという指標でみると、10月末現在、25話連続でツイッター世界トレンド1位に輝いている。この盛り上がりは大河ドラマとして異例だ。

視聴率は普通なのに、なぜSNSではものすごくバズっているのか? なぜ私は『鎌倉殿の13人』にハマっているのか? 『鎌倉殿の13人』には、なぜそんなにインターネットを湧かせる力があるのか? そんな『鎌倉殿の13人』の魅力を3つに分けて解説したい。

大河には似つかわしくないダークヒーローが主人公

① 時流に合った、残酷な見せ場の多さ

大河ドラマというと、どんなイメージを持たれるだろうか。

朗々としたオープニングから始まり、武士たちの志を描きつつ、日曜夜にお茶の間みんなで楽しめる、一家団欒のための物語。そんな印象が強いのではないか。

だからこそ大河ドラマの主役は、日本人がみんな知っている歴史上の著名人であることが多い。坂本龍馬、織田信長、西郷隆盛、平清盛、渋沢栄一……。時にはマイナーだと言われる人物が主役になることもあるが、基本的に大河ドラマは「みんなのヒーロー」が物語を牽引する。

しかし『鎌倉殿の13人』は真逆だ。これまでの大河ドラマのイメージを覆す人物を主役に据える。主人公の名は、北条義時。歴史の教科書を思い出しても、誰だっけ? と首をかしげてしまう。「北条政子の弟で、源頼朝の側近で、北条泰時の父」と、周辺人物のほうが有名な人物である。

しかもその経歴だけ見ると、まごうことなく日本のダークヒーロー。実は鎌倉時代とは、御家人同士の仲たがいと殺害の歴史だ。そのなかで生き残って権力を手にしたのが北条義時なのだから、「仲間を殺してのし上がった人物」と言っても差し支えない。日曜夜に見るには、あまりに非道徳的な主人公ではないか。

しかしそんな残酷な御家人同士の殺し合いを、三谷幸喜は残酷なまま、魅力的に描いている。