韓国発の人気コンテンツと同じフォーマット
そもそもコロナ禍以降に流行したエンタメといえば、『イカゲーム』などのサバイバルドラマ、『梨泰院クラス』などの主人公のし上がり物語、あるいは『Nizi Project』『Produce101』などのアイドルオーディション番組だ。
これらのすべてにおいて、「誰が生き残るか」「どう勝ち上がるか」を視聴者が楽しむ、という特性がある。実は『鎌倉殿の13人』もフォーマットとしては、サバイバルドラマやオーディション番組と同じなのだ。
最初は主人公と一緒に闘っていた、たくさんの御家人たち。彼らがどのように生き残り、そしていったいいつ死ぬのか。視聴者はまるでサバイバルドラマやオーディション番組に熱狂する時と同じように「このキャラクターはどこまで生き残るんだろう」と手に汗を握る。
しかも『鎌倉殿の13人』は必ずキャラクターたちを「魅力的に見せてから」作中で死なせている。彼らの見せ場は、どれも見事としか言いようがない名場面たちだった。
上総介の最期、義経や頼朝の最期、善児の最期、畠山の最期、和田の最期。どのキャラクターをとってみても、私たち視聴者はキャラクターを好きになってから別れを経験している。しかもそれが一人や二人ではない。物語の中で延々とサバイバルドラマが続くのだ。これがSNSで毎週阿鼻叫喚が生まれているわけである。
誰も知らない時代を逆手に取った三谷幸喜
② 鎌倉時代という先の読めない舞台設定
さらに『鎌倉殿の13人』がサバイバルドラマとして機能するのは、視聴者が鎌倉時代の歴史にあまり詳しくないことを逆手に取った結果だ。
たとえば戦国時代や幕末の物語は、何度も主人公を変えて大河ドラマで描かれている。視聴者もなんとなくどのように江戸幕府が倒幕されるのか、漠然と知っている。
しかし鎌倉時代は、これまであまり大河ドラマになっていない。平家討伐までは、平清盛や源義経といったヒーローがいるから描かれていた。が、源頼朝が鎌倉幕府を打ち立ててから、北条泰時が御成敗式目を出すまでのおよそ100年間。意外と私たちは、どのような経緯で歴史が動いたのか、知らないのだ。これといった特筆すべきヒーローが少ないので、物語にしづらかったのだろう。
しかし『鎌倉殿の13人』はその状況を逆手に取る。三谷幸喜は大河ドラマ『新選組!』や『真田丸』で、史実を基にした群像劇を描いてきたキャリアがある。歴史劇でありながら群像劇でもある――そのような「三谷幸喜大河ドラマ」の性格が、鎌倉時代の物語にぴたりと合っている。だからこそ、群像劇として描かれる鎌倉時代の物語は、視聴者の目には新鮮なサバイバルドラマとして映る。