がんが薬物療法だけで治る時代が来る⁉︎
もしかしたら、薬だけで直腸がんが治る時代がやってくるかもしれません。これまでも、ドスタルリマブと同系統のメカニズムで効果を発揮する免疫チェックポイント阻害薬には、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)をはじめとして、いくつかの種類がありました。それぞれ良い薬なのですが、直腸がんに対してドスタルリマブほど劇的な効果は示しません。ドスタルリマブの効果が本当だとしたら、いったい他の免疫チェックポイント阻害薬と何が違うのでしょうか。その理由が明らかになれば、さらに効果のある薬を作ることが可能になるかもしれません。
ただし、課題はまだいくつもあります。少数の患者さんだけを対象にした臨床試験で、長期的な予後がまだわかりません。また規模が小さい研究では、偶然に薬の効果が過大評価されたものが注目されがちで、追試では期待したほどの効果が示されないこともあります。あるいは画像検査でがんが消失したように見えても、少数のがん細胞が残っていて再発するかもしれません。だとしたら、やはり手術は必要です。
こうした課題については、今後の研究によって明らかになっていくでしょう。ドスタルリマブは欧米でも直腸がんに対しては未承認ですが、今後の研究で効果が確認されれば承認され、標準治療となって多くの患者さんがその恩恵を受けられます。ただ、すべてのがんに効くわけではなく「ミスマッチ修復機構欠損によるステージII~IIIの直腸がん」限定の話です。他のがんに対しては、別途きちんと臨床試験が実施され、結果が論文として発表され、多くの専門家の検証に堪えなければ標準治療にはなりません。こうして一歩一歩改善されてきた治療の集大成が、現在の標準治療なのです。