健康のために食生活の改善を考えるとき、私たちは「何を食べるか」に注目しがちだ。だが、血糖値を研究するジェシー・インチャウスペ氏によると、同じ種類と量の食事でも、食べる順番を変えるだけで体への悪影響が7割以上も減るという――。

※本稿は、ジェシー・インチャウスペ『人生が変わる 血糖値コントロール大全』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

野菜、果物、肉などのさまざまな食材
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心身のあらゆる場所に影響を与える血糖値スパイク

わたしたちはよく、「何を」食べるべきか、また、食べてはいけないかに注目する。でも、「どのように」食べるかは考えているだろうか? じつは、食べ方こそが血糖値曲線に大きな影響を及ぼすのだ。

同じ食品からなる食事(つまり栄養もカロリーも同じ食事)が、食べ方によってまったく違う影響を与えることがある。それを証明した論文を読んだとき、わたしは驚愕きょうがくした。2015年のコーネル大学の非常に画期的な論文だ。デンプン、食物繊維、糖、タンパク質、脂肪を、正しい順番で食べると、全般的に血糖値スパイク(血中のブドウ糖=グルコースの濃度である血糖値が急激に上昇すること)が73%も減り、インスリンスパイクも48%減った。これは糖尿病の人にも、そうでない人にも当てはまる。

血糖値スパイクは、気分や、睡眠、体重、肌の状態、免疫システムの働き、心臓病のリスク、受胎率まで、あらゆることに影響するため、糖尿病の人だけでなく健康やダイエットに関心のあるすべての人にとって重要な指標だ。

では、食事の正しい順番とは? まず食物繊維、次にタンパク質と脂肪、最後にデンプンと糖である。

食べる順番を変えるだけで糖尿病の症状が改善

研究によれば、この順番による効果は、糖尿病患者の血糖値スパイクを減らすために処方する糖尿病薬に匹敵する。2016年の注目すべき研究で、さらに決定的な結果が出た。2型糖尿病患者をふたつのグループに分け、標準的な食事を8週間、ひとつのグループは正しい順番で、他方は好きなように食べてもらった。

すると、正しい順番で食べたグループは、HbA1c値(糖尿病患者にとってはおなじみのヘモグロビンA1c検査)が著しく下がった。2型糖尿病が改善しはじめたということだ。その一方で、同じ内容で同じカロリーだが、好きな順番で食べたグループには、症状の改善は見られなかった。まさに目をみはるような発見だ。