専門家からは、指導部の暴走を恐れる声も聞かれるようになった。カリフォルニア大学のビクター・シー教授(政治学)はガーディアン紙に対し、中国の新たな最高指導部と中央軍事委員会の人事は、習近平の命令が「いかに極端であろうとも」実行に移されることを保証している、と指摘している。「台湾侵攻の命令も含まれる可能性がある」と教授は言い添えた。

台湾の「シリコン・シールド」の危うさを示すような報道もある。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は10月19日、Appleなど大手に半導体を供給する台湾TSMC社が、日本での生産力の強化を検討していると報じた。中国との緊張の高まりを受けた「地政学的リスクを軽減するため」の動きだと同紙は報じている。

地図上の台湾に赤ペンで丸
写真=iStock.com/Yevhenii Orlov
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これまで台湾を中国の軍事的脅威から守る強力な材料となってきたシリコン・シールドも、軍事演習を展開し攻撃色を高める中国共産党を前に、どこまで安定を保てるかは未知数だ。米CNBCは、「世界の指導者らが、台湾が中国からの独立を維持できるかに関し、懸念を表明している」と指摘する。

習近平の暴走を止める者のいなくなった3期目政権の誕生により、台湾海峡を挟んだ緊張はピークに達しようとしている。半導体業界の大御所が私財を投じて国の防衛に走らざるを得ない現在の姿は、中国の軍事圧力を前にしたシリコン・シールドの脆さを象徴しているかのようだ。

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