——胡錦濤ら共産党関係者が望んだ結果が今の習近平だと。

【李昊】そこが難しいところです。当初は「強いリーダーが必要だ」で習近平の権威強化に合意があったとしても、その合意が今も続いているかはわかりません。いったん強力なリーダーが誕生してしまえば、その後に後悔しても枷はつけられないわけです。2018年の憲法改正の時点で、こんなはずじゃなかったと後悔した共産党関係者もいたのでは。

大切なことは大量の会議ではなく、休暇中の面会で決まる

——素人にはさっぱりわからないのが、中国の強いリーダーってどう決まるのかという点です。選挙があるわけでもなければ、クーデターがあったわけでもない。どういう理屈で「いまは反論できる」「いまは言えない」と決まるんでしょうか?

【李昊】中国共産党は成立以来、革命政党らしく秘密主義を貫いています。なので、その意志決定のメカニズムは根本的にはわからない、と言わざるを得ません。ただ回顧録や流出した記録などから一部は推察できます。

中国共産党は大の会議好きで、大量の会議を開催しています。会議での合意が正式決定となるわけですが、会議前にひたすら根回しする時間があるわけです。そこで落としどころが決まり、あるいは反対はできないという雰囲気が醸成されていく。

有名な根回しの場としては北戴河会議があります。会議と名前がついていますが、実際には避暑地である河北省北戴河に、中国共産党の高官や引退幹部が休暇のために集まるのです。ここで一緒に散歩したり、個別に面会したりしながら、意見交換を重ねます。このような非公式な会合がその後の政治決定を大きく左右しうるのです。

自民党とはまったく違う中国共産党の「派閥事情」

【水彩画】胡耀邦元総書記を辞めさせた会議とか、本当にそんな感じだったようで、もう辞めさせる同意はできていて会議を開いたら出席者みんなでガンガン詰めて追い込んでいったという。総書記解任は会議で決まったわけですが、その前の根回しですでにルートは設定されていたわけです。

天安門
写真=iStock.com/kool99
※写真はイメージです

——会社で言うと、「大事な話は全部、喫煙所で決まる」ですね。また、よく報じられているのが派閥です。高級官僚の子供たちで作る太子党、上海で勤務経験のある上海閥、共産主義青年団出身者の団派などがよく取り上げられます。最終的に会議で決定するのであれば、いくら根回ししても、所属メンバー数が多い派閥の意見が通るのでは?

【李昊】日本人がぱっとイメージする派閥、たとえば自民党の派閥と中国共産党の派閥とはまったく別物なんですね。自民党の派閥は誰がどのグループに属しているかは明確にされます。ところが中国の派閥は誰がメンバーなのかはわからない。

「あの人は上海でのキャリアがあるからきっと上海閥なのだろう」と、周囲が推測しているだけなのです。下手をすると、本人はその派閥のメンバーと全く交流がないということもあるわけです。

——周囲からは「××派」と思われていても、本人はハテナという状況がある、と。