人間の理性は不完全で、「抜本的改革」は成功しない
では、本当の「保守」とは、どういった考えなのでしょうか?
『フランス革命の省察』をひもといてみましょう。
そもそも、どうして、バークは、抜本的な改革や革命というものに反対したのでしょうか。
理由は、簡単です。
それは、社会は複雑なものであるのに対して、人間の理性には限界があるからです。
つまり、人間は、社会というものを十分に理解していない。社会だけではなく、1人の人間についてすら、複雑で精妙なので、よく分かっているとはいえません。
普通に考えて、よく分かっていないものを抜本的に改革したところで、それが成功するはずがないでしょう。
バークが革命とか抜本的改革とかに反対したのは、人間の理性というものが不完全であるからという、その一点に尽きます。
革命は悲惨な結果をもたらす
実際、フランス革命は、自由・平等・博愛の理想を実現するため、社会を抜本的に変えようとしましたが、その結果、政治は不安定化し、社会は大混乱に陥り、挙句の果てには、ロベスピエールによる恐怖政治やらナポレオンによる侵略やら、自由・平等・博愛とはおよそ正反対の結果をもたらしました。
人間が理性で見出した原理・原則に基づいて、社会をゼロから構築しようなどというのは、傲慢極まりないことです。
バークには、それが分かっていました。だから、フランス革命を見て、それが失敗に終わると予見できたのです。
フランス革命以外にも、例えばロシア革命、中国の文化大革命、カンボジアのポル・ポト派による革命など、マルクス主義の理論にしたがって、国家を抜本的に変えようという革命は、ことごとく、悲惨な結果をもたらしてきました。
それは、マルクス主義の理論が、複雑な経済や社会を理解する上では、はなはだ不完全なものだったからです。