「いらんモノはコメ兵に売ろう!」
堤 この映画は、名古屋で撮ったということがひじょうに大きいんです。実は名古屋のほうが、東京よりもホームレス問題というのは露出しています。愛知万博(2005年)のときに「一掃する」「みんなシェルターに入れちまえ」みたいなことを自治体が宣言して。けれど、全然そんなものはうまくいかなくて。
三浦 極めて反エコロジカルな政策ですね、それは。
堤 自治体側は「ホームレスは家に帰れ」と思っていたらしいのだけれど、ホームレスですからそれも無理で(笑)。名古屋はひじょうに問題が露出していることが多く、それ故に公園みたいなところでちょっと牧歌的に暮らしているのは、東京よりもリアルかなと思って名古屋にしたんです。
名古屋に東京から撮影チームを連れていくと、旅費や食費がかかります。これが、この作品規模ですとなかなか厳しくて、現地の名古屋のチームを使うことにしました。もう何十年も慣れ親しんだ東京のチームですと、一切説明する必要がないんです。名古屋も知らない方々ではないけれども、やっぱりワンカット、ワンカット、意味と狙いを説明していかないと映像になっていかない。すぐに把握してもらえたのですけれども、初めて映画を撮るような疑似体験をすることができたと、それがまず一番の利点ではありました。
三浦 名古屋といえば、鈴本さんの家の中で、コメ兵のCMが繰り返し流れますよね。僕、この腕時計、コメ兵で買ったんですが(笑)。
堤 実はあのCM、一昨年ぐらい前に私が作っていまして。
三浦 この映画の中で使うつもりではなく?
堤 もちろん。僕の中では「いらんモノはコメ兵へ売ろう!」って、スーパーコピーなんですよ。それが連続的にテレビで流れていて、あと、「ハヤシもあるでよ」っていうのと一緒にDNAに入っちゃっているわけです(笑)。
http://www.komehyo.co.jp/cm/cm.html
コメ兵 売るわけムービー50代男性 堤幸彦さん
http://www.youtube.com/watch?v=GR4Cjp_w3KE
株式会社 コメ兵 堤幸彦監督制作 新テレビCM 発表会見
http://www.ustream.tv/recorded/8787399
堤 コメ兵さんも、一時期、ほんとうにいらないモノばっかり集まってきちゃって、業態をちょっと変えられたんですね。しばらくあのコピーは消えていたんです。ところが、偶然のきっかけで、私にコメ兵のCM制作のお話しがあって。私は「条件があります。『いらんモノはコメ兵へ売ろう!』と連呼できるのであったら、面白いのを作ります。僕も出ます」と言って(笑)。
僕はとにかく高校生の頃はコメ兵さんのお世話になっているんです。なぜ世話になったかというと、コメ兵って楽器コーナーがあるんですよ。ほんとうに安い楽器が買えた。1970年初頭にロックバンドをやっていた貧乏な高校生は、お金がないのでコメ兵でしか楽器が買えないんです。なぜそんなにしょっちゅう行かなきゃいけなかったかというと、当時のロックのスタイルは、興奮するとギターを壊すものであったからです。
三浦 ああ、ピート・タウンゼントだ(笑)。
http://www.youtube.com/watch?v=T2rolE9DlbA
堤 はい、だから1000円ぐらいのギターじゃないとダメなんですよ。まあ、実際は壊す勇気もなくて、次々に安いギターが増えていくんですが(笑)。とにかくコメ兵さんにはお世話になったんです。だから僕自身もギターを持って、そのCMに出ているわけです。