浮気相手へのプレゼントを買うためにキャッシングしていた夫

社交的でアウトドア派の村瀬さんは家にこもるような生活を送ったことがなく、勉強も嫌い。コツコツと物事を続けることが苦手で飽きっぽい彼女は家計簿もつけたことがなければ、貯金という概念も持っていませんでした。

それが、妊娠をきっかけに趣味の飲み歩きもできなくなり、心身の不調が続いたこと、また何より赤ちゃんができたことで外に向いていた意識が「家の中や自分自身に向くようになった」と言います。それが浮気を発見するきっかけになり、同時に夫の借金にも気づいたのです。

「金遣いのあらい人だとは思っていましたが、私自身も散々好きなものを買っていたのでとがめることもできなくて……」

浮気相手へのプレゼントをキャッシングで買ったり、趣味のアウトドア用品や時計など、身の回りのものはすべてハイエンドなもので揃えたがる人だったらしく、村瀬さんが彼の借金を知ったとき、返済残高は300万円に膨れ上がっていました。

30歳目前でシングルマザーになって人生を再設計

堅実だと思っていた公務員の彼が借金まみれだったとは思いもよらず、妊娠中から裏切られていた事実も相まって、夫婦関係は修復不能に。村瀬さんがシングルマザーになったのは30歳目前のタイミング、子どもは1歳でした。

ベビーカーを押す母親
写真=iStock.com/FotoDuets
※写真はイメージです

私のところに相談に来てくれたのは、離婚して半年が経った頃。ここまでの話だけ読むと「手に職もないままシングルマザーになってしまったアラサー女性」ということで、悲壮感たっぷりに思えるかもしれません。でも、実際に会った彼女は意外に前向きで、むしろ私にはキラキラして見えました。

明日の食費や家賃などについて村瀬さんは深く考えることもなく、誰かがなんとかしてくれるもの、と思っていたそうです。「シングルになって爪楊枝がなくなったとき、はたと『これも自分で買わなきゃいけないのか!』とあらためて気づいたんです」と、恥ずかしそうに打ち明けてくれました。シングルマザーになって貯金残高とにらめっこする生活をはじめたことから、彼女の人生設計が再スタートします。

公的制度を片っ端から調べて必要なサポートを確保

浪費家夫婦だったので貯金はゼロ。借金まみれの彼から慰謝料をもらえるわけもなく、養育費としてお願いしていた月5万円の振り込みも公正証書をとっていない口約束だったため、もらえた金額は0円。

資金も収入源もない村瀬さんは実家に身を寄せましたが、実家に余裕があるわけでもなく、両親もまだ現役で働いているため、子育ても頼れません。村瀬さんはまさに「ないない尽くし」の再スタートを切りました。

そんな彼女がまずとった行動は、役所へ行くこと。シングルマザーが受けられる支援・手当を片っ端から調べ、子育て支援団体を紹介してもらい、子育てに必要な「お金」と「人手」を得る努力をしました。そして懸案事項の仕事は、あえて今はパートをしながら貯金を続ける選択をしました。村瀬さんは30歳から勉強をはじめ、看護師になろうとしているのです。