「未成年飲酒・喫煙」を一律に連帯責任としてもいいのか

ここでまず、直接的な被害者が存在しない不祥事事例(部員による喫煙、未成年飲酒)を検討してみたい。これらの事例は、直接的な被害者は存在しない。もちろん、飲酒によって暴行を加えられることや、受動喫煙によって健康を害されるといった間接的な危害は存在するが、直接的な危害を加える行為ではない。

そのため、いじめや暴行といった事例と比較すると、当事者の責任は軽いと言える。そのことに伴い、関与していない部員の連帯責任が問われるとしても、重くはない。

①~③に照らし合わせると、突発的に生じた部員による飲酒や喫煙の不祥事に対しては、関与していない部員に連帯責任を問うことは問題がある。なぜなら、部員は当該行為に反対していたとしても、喫煙や飲酒という個人的な行動を阻止することは現実的に極めて困難であるためである。ここではそもそも反対する機会を持っていないため、連帯責任を問うのは妥当ではないと言える。

ビールとタバコ
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反対する機会があり、何らかの貢献ができるかどうか

しかしながら、部員に飲酒や喫煙を促進させる風潮が存在した場合には、再考する必要がある。部員による飲酒や喫煙を知りながら反対や注意を促さず、また、黙認した部員には、連帯責任が生じる可能性がある。

なぜなら、部員は「②容易に入手できる知識(ここでは未成年の飲酒・喫煙が法律で禁止されていること)によって、反対する機会を持って」おり、また、「③反対することが完全に無益ではなく、何らかの貢献ができる見込みがある(ここでは部内の治安を良くできることなど)」ためである。

一方で、部員による飲酒や喫煙に反対の行動に出ることは、深刻なリスクに直面するケースもある。特に、上級生から下級生までのヒエラルキー構造が存在している部においては、上級生の飲酒や喫煙に対して、反対や注意を行うことは暴力やいじめの対象となり、部から排除される危険性を伴う。

このような状況において、反対の行動を起こすことができなかった下級生に、連帯責任を問うことは「①深刻なリスクなしに、反対する機会を持っている」の観点から問題がある。以上の点は、被害者が同じチームの部員である部内暴力(いじめ)の不祥事事例においても同様のことが言える。