自民党には、選挙のときに頼れる団体や支持層がほとんどいない。公明党にとっての創価学会、日本共産党にとっての「しんぶん赤旗」読者といった熱心な応援団がいないのだ。日本会議や仏教各派、創価学会以外の新興宗教と手を組む機会はあっても、選挙のときに動員力がある応援団でいてくれるほどの組織化はできていない。だから、自民党は「勝共連合」という看板を掲げた旧統一教会が接近しやすかった。

弔問外交に意味はない

韓国のテレビを観ていたら、8月12日にソウルで、教団の関連団体UPFの大規模な会合が開かれたと伝えていた。21年9月に、安倍元首相がビデオメッセージを寄せたのと同じ会合だ。

教団幹部の開会挨拶では、安倍元首相がスクリーンに映し出され、偲ぶ会のようだった。米国のトランプ前大統領やペンス前副大統領がビデオメッセージで安倍元首相を追悼し、ポンペオ前国務長官は会場で献花台に花を手向けていた。22年は文鮮明氏の没後10年に当たるが、安倍元首相のほうが追悼されている印象だった。もちろん、暗殺の原因が自分たちの教団である話は一切なかった。

日本では1カ月半遅れで、国民の反対が多い国葬が営まれるのだから、しらけた気分になる。「弔問ちょうもん外交になる」という人もいるが、8月末現在で来日する可能性があると報じられているのが、人気失墜中のカマラ・ハリス米副大統領や、政界を引退したメルケル独前首相などで、彼女らが来たところでほとんど意味はない。安倍氏と27回も面会した、渦中のプーチン露大統領が来るわけでもない。国民は安倍元首相の死を悼めば悼むほど、自民党と旧統一教会の関係を問題視するはずだ。

岸田首相や自民党は、組織的つながりを認め、霊感商法や合同結婚式で人々を苦しめている団体とは「金輪際こんりんざい、関係を断つ」と明言し実行しなくてはいけない。自民党の議員が言い訳を続ける限り、内閣支持率はますます低下していくだろう。

(構成=伊田欣司 写真=日刊現代/アフロ)
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