台湾とウクライナを同一視してはいけない
米国連邦議会のナンシー・ペロシ下院議長が2022年8月3日に台湾を訪問し、蔡英文総統などと会談した。強く反発する中国は、4日から台湾周辺で大規模軍事演習を行い、弾道ミサイルを日本の排他的経済水域(EEZ)に落下させるなど、台湾をめぐる緊張は一気に高まった。
長年、台湾と中国のアドバイザーを務めた私から見て、台湾情勢を正しく理解するのは難しい。ロシアによるウクライナ侵攻のアナロジーから台湾有事を懸念する声もあるが、人民解放軍が台湾へ武力侵攻できる状況ではないと私は見ている。
まず、台湾軍はいつでも人民解放軍と戦える。中国統一を謳ってきた国民党の影響もあり、戦争への準備はウクライナ軍の比ではないくらい万全だ。大国ロシアが小国のウクライナ相手に大苦戦する様子を見れば、人民解放軍は大陸側への直接反撃も念頭に入れると台湾を簡単に攻められない。
さらに経済の問題が大きい。もし台湾有事が起これば、中国の国内産業は即死する。中国の産業を支えているのは、実は台湾企業と台湾人だからだ。
台湾の大企業は、ほとんどが中国に進出している。例えば、中国最大級の食品メーカーである康師傅は、台湾の頂新グループが親会社だ。