どの社も生き残りに一段と必死だ

現在、わが国の鉄道各社は一段と厳しい事業環境に直面している。コロナ禍によって鉄道の利用客は減少した。地方では収益性が低下する路線も増えている。

その状況下、JR東日本は鉄道事業の社員を約4000人削減する方針だと報じられた。不動産事業などに経営資源を再配分して収益源の多角化に取り組むとみられる。近鉄や西武鉄道はホテルなどの資産を売却して、バランスシートを身軽にする“アセットライト”経営を強化した。各社は生き残りに一段と必死だ。

記者会見するJR東日本の深沢祐二社長=2022年9月6日、東京都渋谷区
写真=時事通信フォト
記者会見するJR東日本の深沢祐二社長=2022年9月6日、東京都渋谷区

鉄道各社は長期の存続のために、新しい取り組みをさらに増やさなければならないだろう。ウクライナ危機の発生などによって、世界経済の後退懸念は高まっている。それはわが国の鉄道利用者数を減少させる要因の一つと考えられる。

その一方で、やや長めの目線で考えると海外では、物流や観光などのための鉄道輸送需要は増加する可能性が高い。足許では中国から資本が流出し、東南アジアの新興国やインドに流入する動きが加速している。

そうした成長期待の高い国や地域での鉄道インフラ整備や、それを軸とした都市部での動線整備など、わが国の鉄道各社にとって海外での潜在的な収益チャンスは増えるだろう。事業環境の厳しさが高まる状況ではあるが、鉄道各社は成長期待の高い海外に進出し、収益力を強化すべき局面を迎えている。

ウィズコロナで業況は徐々に上向いているが…

現在、国内の鉄道各社の業況は徐々に上向いている。それはわが国においてウィズコロナの経済運営が目指されていることなどに支えられた。ただし、収益増加の持続性に関しては懸念がある。複数の要因によって鉄道旅客は減少し、業界全体で運輸収入はコロナ禍発生以前の水準に戻っていない。

国土交通省の“鉄道輸送統計調査”によると、2000年度のわが国鉄道旅客数は約216億人だった。2018年度の旅客数は約253億人に増加し、2000年度以降のピークを記録した。時系列で確認すると、2012年度以降に旅客数は顕著に増えた。その背景要因として、リーマンショック後の世界的な金融緩和や中国共産党政権による経済対策の実施などによって、世界経済全体が緩やかに成長した。