子どもたちの純粋な問いかけが、嬉しかった
子どもってすごいんですよ。気になったことはなんでも聞きます。びっくりしましたが、この年齢の子どもたちには傷つけてやろうという悪意も、かわいそうだという同情もないんです。ただの純粋な疑問だけなんです。
だから私もまっすぐに答えていきました。そして、こうしてくれたら良太も助かる、という言葉も付け加えていきました。
「喋るのはヘタだけど、言ってることはわかるからね。何回かゆっくり喋ってあげてね」
「やったらあかんことをしてたら、叱ってね。きっとわかるから」
「掃除はできるから、なんでも任せてね」
子どもたちは「わかった!」と言って上手に付き合ってくれました。良太も、自分の話をじっくり聞いてくれるのが嬉しかったのか、みんなを笑わせるためにテレビでお笑いの芸人さんがやっているギャグを覚えて、披露しては一笑いをとっていました。
ここにもし、他の親御さんや先生がいたら、質問をしてくる子どもたちを止めたかもしれません。そんな失礼なことを聞いてはいけません、と叱ったかもしれません。でも私は嬉しかったです。質問に答えることで、良太とコミュニケーションをとろうとしてくれるのが。
「もし良太のことで悩んだり、嫌なことがあったりしたら、おばちゃんに言ってね」
それは子どもたちにずっと伝え続けていました。
障害があってもなくても、子どもが学校でケンカをしたり、トラブルを起こしてしまったりすることは防げません。むしろ、ケンカやトラブルを乗り越えて、人は強くなることもあります。涙を流すことも、謝ることも、良太にはきっと必要な経験です。
その経験は奪わないけど、良太がうまく言葉で説明ができないのは事実なので、どんなことが起きたのかは、周りの人々から教えてもらい、私がちゃんと把握できるように信頼関係を築いていきました。
「普通学級にいさせてほしい」と頼んだ理由
友達だけではなく、学校の先生たちにも恵まれたと思います。
最初、良太は「なかよし学級」(特別支援学級)で、一日の大半を過ごす決まりでした。でも私は、もう少し、普通学級でみんなと一緒に過ごす時間を作ってほしかったのです。
それを伝えると、困って渋い顔をする先生もいました。そこまで手が回らない、なにかあったら責任がとれない、などいろんな心配ごとが先生にはあります。とてもわかります。それでも、なぜ普通学級にいさせてほしいかを、諦めずに伝えました。
良太がかわいそうだからではありません。障害があることを認めたくないからではありません。障害がない友達と一緒にやっていくためのルールを、良太に学んでほしかったんです。
良太は思い通りにいかないと、たまに癇癪を起こしてしまいます。空気を読むのが苦手で、走り回ったり、1人で喋ってしまったりもします。でも、良太が大好きな友達とこれから先も楽しく人生を過ごしていきたいと思うなら、それらのことは我慢しないといけない時がいつかくるのです。