選挙前は聞かれても答えなかったのに…

私には糖尿病と高血圧という持病がある。1、2度だったが、咳をしたとたんたんがのどに絡まり、息が詰まるかと思うほどむせたことがあった。後期高齢者は肺炎を起こす確率も高い。

岸田首相はコロナに罹っても、万が一の場合は即入院でき、手厚い治療を受けられるからいいが、私のような者は、重症化しても放っておかれるのではないか、寝ても覚めてもそのことが不安だった。

岸田首相も、これを機に、国民が何を一番心配しているのかを知り、どうしたらその不安を取り除くことができるのか、真剣に考えてもらいたいと思う。

原発の稼働年数を増やし、その上、新しい原発をつくるというのは、昨今の電力逼迫ひっぱくや、ウクライナ戦争を見ていて思いついたようだが、議論を尽くしたうえでの結論とは到底思えない。

原発への依存を減らすというのが、日本を含めた世界の潮流である。いうまでもないが福島第一原発事故からわずか10年余り、

「周辺の住民は故郷を追われ、日本社会全体に深刻な不安が広がった。今も多くの人が避難を強いられ、賠償も不十分だ。廃炉などの事後処理は、いつ終わるのかの見通しすらたたない」(朝日新聞8月26日付

岸田首相は参議院選前は、原発の新増設について聞かれても答えなかったが、「選挙が終わるや『検討』を始め、年末に結論を出すというのでは、およそ民主的決定とはいいがたい」(同)。有権者をだましたのである。

「聞く力」の姿勢はどこへ行ったのか

岸田首相は、ウクライナ中南部のザポリージャ原発が、ロシアの攻撃にさらされていることを見ないで、耳も塞いでいるのではないか。

もし事故を起こせば、チョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故を上回る大惨事につながりかねないと、国際原子力機関(IAEA)が警告している。

災害大国ニッポンでは、この20~30年の間に高い確率で首都直下型地震や南海トラフ地震が起きるといわれている。

自然は常に人間の想像力を超えた災害をもたらす。自然をおそれる心があれば、絶対に安全、安心などという言葉は使ってはいけない。岸田首相が今やるべきことは、口先ではなく、真の福島復興を早急に成し遂げる。それを最優先すべきである。

安倍晋三元首相の国葬を、国民の意見も聞かず一人で決め、早々と閣議決定した頃から、岸田首相は「変容」してきたように見える。

私は、亡くなった人を悼む気持ちは人一倍持っているつもりである。もちろん安倍元首相にも同じようにある。だが国葬はいけない。世論調査を見ても国論を二分しているのに、国民にまったく説明もせず、自分一人で決めてしまうというのは、普段、聞く耳を持つといっている人間とは思えないやり方ではないか。