長文的思考は本を読まないと身につかない

ネットの情報に対して、教養書やビジネス書は、文字数が少ないものでも4万字、分厚いものになると12万字程度のボリュームがあります。たった1つのテーマで、それだけの文字数が、1人の著者の視点でまとめられているのが、1冊の本なのです。学術書になると、場合によってはさらに膨大なボリュームになります。

山田竜也『神速で稼ぐ独学術』(技術評論社)
山田竜也『神速で稼ぐ独学術』(技術評論社)

ここでポイントになるのが、「1人の著者が書いた」「特定の編集方針を決めた」コンテンツに長時間接することです。これは、先ほど触れたハイパーリンク的思考とまったく逆のベクトルです。ネットで情報収集する場合は、ささっと1文を読んでしまったり、わからないところや納得がいかないところは飛ばしてしまったり、目まぐるしくテーマの違うコンテンツを行き来したりと、忙しない学習になりがちです。それに対して、本を読む時には次のものが身につきます。

・1つのテーマに対して長い時間掘り下げた視点
・著者の思考
・著者の考えていることに疑問を感じ、立ち止まり対話しながら読み進めていく批判能力

本を読んでいるときは、どうしてもわからないところや難解なところ、著者の考えと合わないところがあると、私たちは一度立ち止まって考え込んでしまいます。また、1つのテーマに対して複数の章から1人の著者の複数のアプローチでの視点に触れることができ、情報に対する縦の深さと横の広がりを得ることができます。このような思考法を、私は「長文的思考」と呼んでいます。これは、普段から本を読んでいないと身につかないものです。

長文的思考はAIにはまねできない

長文的思考は、かんたんに答えが得られないような問題に向き合う能力を身につけるのに最適です。昨今、答えが決まっていて導き出せるようなものは、AIなどの機械学習がどんどん効率的に処理できるようになってきています。逆に、答えがかんたんに出せないような複雑なテーマや課題には、私たち人間の能力が必要とされ続けます。

本で身につく「長文的思考」というのは、ひと筋縄ではいかない複雑なテーマを考え抜くのに極めて適した能力とも言えます。逆に言うと、ただ単に知識を丸暗記するような読み方をしてしまうとこのような能力が身につかないので注意が必要です。

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