読書とネット検索で得られる情報の違い

本の持つ絶対的な魅力は3つあると考えます。

①企画編集→流通というプロセスを経ている質の高さ

本の最大のメリットともいえるのは、各分野の基礎のクオリティが高いことです。ある程度部数が売れるような内容が普及する傾向にあり、各ジャンルの入門書や、難しい本を噛み砕いた本が多く出版されるケースが多いですが、こういった質の高い基本は、Webの情報では足りないことがほとんどです。

Webで検索して出てくる情報は前後関係や思想が抜けたものが多く、網羅性に欠けるケースも多いです。特定の分野の入門的な本を数冊読むと、まずその分野の知識で複数の著者が共通認識として重要だと思われる情報が被ってくるので、スタンダードな情報が理解できます。また、各著者ごとに異なる複数の視点を学べるので、同じテーマの情報に対して異なるアプローチから学習を繰り返すことになり、格段に理解が深まります。

パソコンの横に積まれた本
写真=iStock.com/Nutthaseth Vanchaichana
※写真はイメージです

本は読みやすく編集され、質も保証されている

本の持つ魅力は、本が世に出るまでのプロセスから生まれる面があります。まず、本はある一定の売れ行きと価値を市場に与えられるかどうかが判断されて、出版できるかどうかが決まります。また、著者が書いた原稿は、編集者、出版社の手を通して読みやすい形や、クオリティが高まるように手直しがなされます。

最近では特に医学分野などで、「売れる」という理由で、科学的根拠が乏しかったり、特定の効能を誇張するような内容の本が出てしまうこともありますが、客観的な目で検証される機会が増えることはまちがいありません。そうやってさまざまな関係者の手を通して、書店ないしは電子書籍(ダイレクトパブリッシングは除きます)を経て、本が私たちの手に渡ってくるのです。これらによって、あまりに事実無根なものや偏ったものは出版されにくくなりますし、質についても一定の保証がされることになります。

また、書店に行くと、時代を超えて長年売れ続けている本や、おすすめの本などを書店員がセレクトしてくれていて、私たちが質の高い知識に触れる機会を得やすい仕組みもできています。

ただし、「出版社を通す」というプロセスにはマイナスの側面もあります。採算が取れない本を出版するわけにはいかないので、おのずと一定の需要が見込めるテーマの本しか世の中に出回りにくくなります。この点には注意してつきあう必要があります。