子供の学力を伸ばすために大人はどう接すればよいのか。公立小学校教員の松尾英明さんは「漢字や算数のドリルの○つけは教師がしていますが、自分でやったほうが、力がつきます。『子供が答えを見てしまうからだめだ』という反論が出ますが、これは根本的な勘違い」という。家庭で親も見習える教育哲学を紹介しよう――。
※本稿は、松尾英明『不親切教師のススメ』(さくら社)の一部を再編集したものです。
漢字や算数のドリルの○つけは教師がすればいいのか
放課後の教師の机の上に、山となって積みあがっているものがある。子どもたちから回収した漢字ドリルや算数ドリルである。言わずもがな、○つけとチェックをするためである。
教師に「何のために」と尋ねたら「○をつけてあげることで、子どもの力になれる」「○をつけることで学習状況を把握する」「間違いがあったら教えてあげられる」「子どもの授業でのがんばりを認める場として」等の回答が考えられる。
しかしながら、それが本当に子どもの力になるのか、成長につながるのかというと、答えは「否」であることが多い。労力がかかるので、教師の「子どものためにやってる感」は出ると思うが、残念ながらそれは単なる自己満足である。教師がドリルに○をつけても、子どもの力にはならない。
ドリルの丸つけは、子どもにとって「セルフチェック」という自己診断力をつける場にもなるのである。自分のやったドリルが、どれだけ正しく書けていたかを、冷静に見る力をつける場である。セルフチェックの力を高めることが、主体的な学習態度を高めることにも通じるのである。
よって、ドリルの○つけは子どもが自分自身でやればよい。教師の側の到達度チェック&成績をつける目的のテストならまだしも、反復のための練習問題で他人に○をつけてもらう必要はない。