誰かが儲かれば、その裏側では必ず誰かが損をする
株式はそれを発行している企業自体に出資するという性格のものです。その企業が成長を続けていけば配当も増えるし、値上がりによる利益を取ることもできます。もしその企業の株主の誰もがその株を長期的に保有していれば、みんな同じように利益を得ることができる、すなわちプラスサムゲームなのです。
ところがFXに代表される為替取引というものは長期に保有していれば、誰でも利益が出るという性格のものではありません。誰かが儲かれば、その裏側では必ず誰かが損をする、すなわちゼロサムゲームとしての側面が強い取引なのです。したがって、運用はどうしても短期的かつ投機的になりがちです。プロの為替ディーラーも個人のFX投資家もその多くは一日の内、何度も頻繁に売買を繰り返して利ざやを稼ごうとしているのです。もちろん前述したようにこういう取引が悪いとは思いませんが、少なくとも「株式投資よりも簡単」ということではありません。
為替レートを読む難しさ
株式にしても為替レートにしても、変動する直接の理由は「需給」です。需要が多い、すなわち買いたいと思う人が多いと上がるし逆に売りたい人が多ければ下がるわけです。ところがその需給を決める要因は何かというと、株式の場合最も大きいのはその企業の業績が良くなるか、あるいは悪くなるかどうかです。したがって、個別の企業の財務内容を分析したり、決算短信や有価証券報告書といった開示資料を丹念に調べたりすれば、今後その企業の利益が成長するか、すなわちその企業が新たな価値を生み出していくかどうかの予測はある程度可能です(あくまでもある程度ではありますが)
ところがこれに対して為替レートというのは単に異なる通貨を両替する時の比率のことですから、通貨自体が何か新たな価値を生み出すものではありません。したがって、レートの変動はあくまでも通貨交換に参加している人たちの心理がどうなのかで大きく左右されます。つまり取引に参加している人たちの心理を読まなければならないことになりますから、これはかなり難しい話です。
「ドルやユーロは海外旅行でなじみがあるから」という程度の理由で始めるのではリスクが大き過ぎます。ましてや老後資金をこしらえるために資産形成をするのであれば、運用自体は長期になりますので、こうした短期的かつ投機的な運用というのは、全く向いていないと考えていいでしょう。