低所得国ではデフォルト、政権交代も
脱グローバル化によって物価が上昇しやすくなった結果、資源をもたない国の通貨は弱含みの展開になりやすい。そのため、わが国の輸入物価には追加的な上昇圧力がかかりやすい。企業はコストの価格転嫁を急がざるを得ない。消費者の負担は増え、社会の不満が高まる。そうした展開を防ぐために、資源輸入国は財政面からのエネルギー資源や食料の価格維持策を強化せざるを得なくなっている。
さらに状況が厳しいのが低所得国だ。スリランカでは食料や肥料の不足に拍車がかかり、物価が高騰した。社会心理は急速に悪化して経済が混乱し、スリランカはデフォルトに陥った。民衆の怒りは急騰してラジャパクサ大統領は国外に逃亡した。パキスタンでも政権交代が起きた。
そのほかにも、ガーナ、エチオピア、ザンビア、チャド、エジプトなどで食料価格が高騰するなどし、経済は危機的な状況に向かっているようだ。低所得国がデフォルトリスクをどのように引き下げることができるかは見通しづらい。米ドルに対する低所得国通貨の下落は鮮明化している。財政破綻に陥るアジアやアフリカなどの新興国が増加する可能性は高まっている。
米国は本格的な景気後退に陥る恐れ
今後、世界的に物価は上昇しやすくなり、金利には上昇圧力がかかりやすくなるだろう。それによって資源輸入国や低所得国の経済は、より大きな下押し圧力に直面する展開が懸念される。足許、中国で不動産バブル崩壊の衝撃が深刻化するなど、世界経済の後退懸念は高まっている。その一方で、ウクライナ危機によってロシアから欧州などへのエネルギー資源の供給量が減少している。各国の企業はコストをかけて資材を調達し、需要を満たさなければならない。
その状況下、米国では労働市場がタイトだ。賃金は上昇し、鈍化してはいるが個人消費は底堅い。それが価格転嫁を支え、物価上昇を予想する消費者は多い。連邦準備制度理事会(FRB)はインフレ率が2%近辺で安定して推移するまで追加利上げを実施し、需要を抑えなければならない。
金利上昇によって米国の労働市場の改善は鈍化し、失業率は上昇するだろう。米国は本格的な景気後退に陥る可能性が高い。それでもFRBは物価安定のために追加の利上げを実施しなければならない。欧州中央銀行(ECB)が置かれた状況は、より厳しい。ユーロ圏の景気は急速に冷え込んでいる。