ジャニーズ×犯罪の相性の良さ

2位 追い込まれて四面楚歌、罪悪感の向こう側を演じる 北山宏光(Kis-My-Ft2)

少し前までは「気のいいあんちゃん」というイメージが先行していた。おそらく「家族狩り」(2014年・TBS系)で演じた青年役に心を救われたからだ。天童荒太原作、家族の呪縛と一家皆殺し事件が絡んだ重くて陰惨な作品だったが、北山が演じたのは男気と家族愛を信じて疑わないマイルドヤンキー。家族に絶望している人物たちの中で、唯一素直に家族礼賛できちゃう役どころ。その明るさは対比として目立ったし、役割を十分に果たしていた。

ただ、近年では秘密と嘘と罪を背負って追い込まれる役が続いている。共感しがたい、性格に難ありの男。加害者である一方、被害者でもあるという難役だ。これが思いのほか良かった。

まず「ミリオンジョー」(2019年・テレ東系)では漫画雑誌の編集者・呉井役。思慮が浅く、心もないが嫉妬や射幸心は強い。大人気のドル箱作品「ミリオンジョー」を描く真加田恒夫(三浦誠己)の担当だったが、彼の急死を隠蔽いんぺいして偽装する。金に困ったアシスタント(萩原聖人)と共謀して連載を続けるが、次第に追い詰められていく。罪悪感が薄く、自らを正当化していく姿に鳥肌が立ったが、悪事が露呈しかける緊張感、手に汗握る展開が毎週楽しみだった。

もう1作は「ただ離婚してないだけ」(2021年・テレ東系)。浮気相手の若い女性(萩原みのり)をぞんざいに捨てたため、家に押しいられた挙げ句、逆に殺してしまう。小学校教員で身重の妻(中村ゆり)と共に遺体を埋めて隠すが、姉の失踪を疑う弟や刑事、ヤクザまでもが絡んでくる。夫婦は追い詰められながらも、狂気の蛮行に手を染めていく。相当エグい展開だが、北山と中村の演技は真に迫っていた。

人相の悪さでは右に出る者がいない森田剛

さて、1位の前に、別枠レジェンド級を紹介しておきたい。演技力は高いが「元ジャニーズ」のふたりである。

類まれなるコメディセンスとスタイルの良さ、惜しまれながらも退所した長瀬智也は言うまでもなく別格。「白線流し」(1996年・フジ系)の胸キュン青春格差恋愛物語から「俺の家の話」(2021年・TBS系)の爆笑&号泣の家族物語まで、数多くの名作に出演。ケチな私に主演作DVD₋BOXを最も多く買わせたジャニーズタレントだ。

もうひとりは、人相の悪さでは右に出る者がいない森田剛。「ランチの女王」(2002年・フジ系)でヒロイン・竹内結子の元彼として登場した時は、マジで身震いした。

キラキラした清くて善い人ばかり演じるジャニーズタレントの中で、独自路線を築いた人だ。暴力性と攻撃性の中にどこか幼さと不遇の哀愁を感じさせる。

特に、映画「ヒメアノ~ル」の怪演は一生忘れられない(悪夢のように覚えているし、ラストシーンのあどけなさにうっかり泣けたし)。退所後に出演した短編映画「DEATH DAYS」は洒落てて素敵だったし、セリフが絶妙に面白い会話劇で、森田の魅力も存分に引き出されていた。シン・森田剛にはこれからも期待している。