数を増やすことはできないが“一人旅”は効果的

数が多いことが良いといっても、生後アストロサイトの数は増やすことはできません。そのため数を増やすことよりも今あるアストロサイトをしっかりと活性化させることが重要だと考えています。

アストロサイトは、脳細胞を働きにかかせない、ノルアドレナリンやアセチルコリン等の神経修飾物質の受容体を豊富に持っていることが知られています。したがって、新奇体験を積極的に行なうことが重要であると考えられます。

私のおすすめは、一人旅です。また、読書や映画を観るのも良いですし、講演会などで刺激を受けるのも良いと思います。新しい人に出会うというのも良いでしょう。そういう意味で、一人旅がおすすめです。

また、私自身が実践している、たまに見知らぬ土地で迷ってみるというのも気軽にお試しいただけるのではないでしょうか。

10分間の微弱な電気刺激で脳細胞が活性化した

他に人工的にグリア細胞を活性化する方法はあるのでしょうか。

経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)と呼ばれる方法は、頭蓋骨の上から非常に弱い電流を10〜30分間流す方法です。刺激中はまったく何も感じないといいますが、刺激後は気分がスッキリしたり、パフォーマンスが向上したりすることが報告されています。

うつ病の緩和や、アルツハイマー病の進行抑制や、脳卒中後のリハビリの促進などさまざまな良い効果が続々と報告されています。また、健常者でも集中力がアップし、学習効果が向上したり、記憶力が良くなるなどの効果もあり、医療だけでなくスポーツや教育などさまざまな分野への応用が期待されています。

しかし、いまだに医療行為として認可を受けていないのは、なぜ効果があるのかがまったくわかっていないからだといいます。

私たちが行なった研究では、10分間の脳の微弱な電気刺激によって、脳の電気活動には大きな変化はない一方、グリア細胞のアストロサイトが活性化されていることを、マウスを使った実験から明らかにしました。この活性化は、ノルアドレナリンによって引き起こされていました。

また脳刺激後からシナプス可塑性が生じ、3時間程度持続しましたが、そのメカニズムにアストロサイトが不可欠な働きをしていることをマウスを用いて実証しました。