ベンチャー企業・都市デザインシステム社長の中川敬文(44歳)も、大前経営塾で「大企業の常識」と遭遇し、新鮮な驚きを覚えた一人である。
中川は04年4月入塾の第5期生。こうわかりやすく説明する。
「ベンチャー企業の経営者は『井の中の蛙』になりがちです。私も社内ではあまりメールを重視せず『直接会って話せばいい』というタイプで、たまに意思疎通に支障が出ても意に介しませんでした。しかし大前経営塾に入ってみると、上場企業のマネジャー、部長クラスの方がたくさんいらっしゃいます。この人たちは、組織を使って仕事をすることに長けています。エアキャンパスの議論を見ているとわかるのですが、皆さんは私のように感覚派ではなく、ロジックを駆使してわかりやすいメールを書いています。このやり方は非常に勉強になりました」
といっても、中川は関西学院大を卒業したあとポーラ化粧品本舗(現・ポーラ)に入社し、短い期間だが大企業の文化に触れている。大前経営塾での「遭遇」は、このころの経験の再確認でもあったはずだ。
ポーラに入社した中川は、新規事業開発部で新しい食品ブランドの立ち上げに携わる。しかし「いつか経営をやってみたかった」という中川は、2年弱で大会社を抜け出し、CIなどを手がける気鋭のマーケティング会社に転職する。
その会社で大型ショッピングセンターの開発プロジェクトなどに携わるうち、コーポラティブハウスと呼ばれる住民参加型のマンション開発やホテル・商業施設の開発を手がける都市デザインシステムの創業者と出会った。