もし「ただの風邪」と決めつけて検査しなかったら…

発症からの経過を先にお示ししたように、今回私は「ごく風邪の引き始め」の段階で検査したことで、新型コロナに感染したことが発症から数時間で確定できたわけだが、このとき検査していなかったらどうだろう。

翌日は熱が出たが1日で下がってしまっている。発症後3日目にはすっかり解熱し多少咳は出るものの体調的には出勤できるほどにまで回復していた。「新型コロナ=重症」との思い込みがあると、「こんな軽い症状なら新型コロナのはずはない」と検査も受診もせず、まだ感染力のある状況で職場や学校に行ってしまう危険性があるのだ。そうした行動は、言うまでもなく感染拡大の新たな「核」となる。

本稿を執筆しているのは発症後5日目の7月20日。ほぼ症状は消失しているが、再度試しに抗原検査を行ってみた。キットはまだくっきりと陽性反応を示した。発症直後に検査し診断できていなかったら、「ただの風邪」と思っていたら、私は今ごろこの状況で高齢患者さんの訪問診療をしていたかもしれない。そう考えるとゾッとしないだろうか。

2020年、夕日がさす渋谷スクランブル交差点
写真=iStock.com/Eloi_Omella
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「迅速に検査する、できなければ休ませる」を徹底すべき

もちろん軽症の人ばかりとは限らない。状態が悪化してきた際に、フォローアップセンターを通じて迅速に医療機関の受診につなげてもらえるのかどうかは多くの人が抱く懸念だろう。このまま感染者が増大すれば、高齢者や基礎疾患のある人、ワクチン未接種者などリスクのある人たちの重症化によって、外来のみならず入院機能も逼迫からまひに陥りかねない。

だからこそ可能な限り迅速な検査と診断、もし検査を行えないのであれば体調不良を押しての出勤や登校は行わないし行わせない、収入を気にせず休める体制を万全に担保することが重要なのだ。

逼迫している現場の医療者の間では、すでに受診抑制もやむなしとの声も上がりつつある。わが国の「フリーアクセス、ハイクオリティ、国民皆保険」は、よく“世界に誇る医療制度”と言われるが、なんのことはない。これらは現場の努力でギリギリ保たれていたように見えていただけであって、じつはその基盤は極めて脆弱だったのである。

「検査したいのに受診したいのに、発熱外来はどこも予約満了、どうすりゃいいんだ!」との怒りの気持ちは痛いほど理解できる。だがその怒りは医療機関やそこで懸命に働く医療従事者にぶつけるのではなく、このような脆弱な医療体制を長年にわたって放置してきた政治の不作為に、ぜひぶつけていただきたい。そして一日も早くまっとうな医療政策を行うよう声を上げていただきたい。その声は決してムダにはならないはずだ。

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