②グルテンが消化吸収を妨げる
胃で分解された食べ物は、最終的には小腸へ運ばれ、そこで膵液によってさらに分解、吸収されます。この過程でも、パンに関しては問題が生じます。それは、近年耳にすることが多くなった「グルテン」によるものです。
グルテンは小麦粉に含まれる「グルテニン」と「グリアジン」という二つのタンパク質がからみ合ってできる成分で、パンのもちもち感や粘り気はグルテンによって生まれます。
グルテンは十分に消化されないまま小腸の粘膜に吸収されてしまうため、消化・分解がされにくいだけでなく、さまざまな問題を起こす可能性が指摘されています。とくにパンは強力粉でつくるため、多くのグルテンを含んでいます。
パンを生地からつくる際に、白い粉が布に付いてなかなかとれないという経験をした人もいると思いますが、これがグルテンの粘着性です。
この粘性物質が小腸に到達すると小腸の絨毛にからみつき、消化吸収を妨害するのです。そして、これが腹痛を起こしたり、未消化のまま吸収されたタンパク質がアレルギーの原因になることも知られています。
近年注目の「グルテンフリー」の落とし穴
最近は糖質を控えたパンも売られていますが、血糖値を上げにくいだけでグルテンはしっかり含まれているため、食材としてはおすすめできません。私も何種類か食べましたが、食後の胃もたれは従来のパンよりは少しいいものの、大きく変わるものではありませんでした。
グルテンは注意すべきものではあるのですが、その一方で、グルテンを含む食品を摂取しないようにする「グルテンフリー」という言葉が一人歩きしている現状にも、注意が必要です。
グルテンはあくまでも小麦粉に含まれる一つの成分であって、グルテンだけが体に悪いわけではありません。日本人の場合、グルテンアレルギーの割合は欧米人に比べて低いため、多くの人にとってグルテンフリーが必要なわけではありません。
むしろ、グルテンフリーを実践していれば、それ以外は何を食べてもいいと考えるのは誤解です。グルテンアレルギーを持たない多くの日本人にとっては、糖質の害のほうがグルテンより大きいことを理解する必要があります。
もちろんグルテンだけでなく、食品に含まれる保存料もよくはないのですが、過剰な糖質に比べたら体に与える影響は少ないと考えます。