【死角②】要人警護のあり方

一方、警備面でも「死角」があった。

今回、安倍元総理の警護が不十分だったという議論が噴出している。警護面で、日本の“常識”と疑問点を検証したい。

山上徹也容疑者は、自作の銃を1発撃った後、さらに安倍元総理に接近して2発目を撃ち、これが体に命中し致命傷となった。

米村敏朗・元警視総監はテレビ出演し、「要人警護はゼロ点か100点。今回はゼロ点だった」と警視庁の後輩らをかばうことなく、厳しい意見を披露した。

2~3秒の判断ミス

1発目と2発目の間に2.5秒から3秒あった。「警視庁SPや県警の警護担当は、なぜ、安倍氏に覆いかぶさらなかったのか」という意見が専門家らの間で続出した。

その後、事件発生時の画像が公開され、SPらが安倍氏と、山上容疑者の間に飛び込む場面が明らかになった。実際、要人警護の要諦の1つに、発砲があった際、瞬時に警護対象の要人に覆いかぶさったり、要人を引き倒したりして、次の銃弾が当たらないように守ることがある。

1981年、米国のレーガン大統領(当時)が銃撃にあった際、SPらが身をていして大統領を守ろうとした。この映像が世界に放送されたため、記憶している人も多いだろう。

国松警察庁長官狙撃事件では実行された

日本の警察にも、過去にレーガン氏警護に勝るとも劣らない要人警護の実例があった。国松孝次・警察庁長官狙撃事件(1995年)だ。

銃撃を受けた際の現場の再現映像が後年になってNHKの番組で放送された。銃弾が発射された後、秘書官が国松氏を倒し、国松氏の上に覆いかぶさった。

その後も発砲が続く中、秘書官は覆いかぶさりながら、匍匐ほふく前進するように国松氏の体を安全な場所に移動させた。

こうした警護のおかげで、国松氏は重傷を負ったものの、一命を取り留め、事件から4年後にはスイス大使に派遣されるまで回復を果たした。