火力発電所の「休廃止増加」という構造的な問題

ちなみに「注意報」段階よりも予備率が厳しくなると、「電力需給逼迫警報」が発令される。実は、3月22日に東京電力管内と東北電力管内で警報が出された。3月16日に福島県沖で地震が発生。この影響で火力発電所が停止した。東京分110万キロワット、東北分225万キロワットが減り、他社からの融通で賄ったが、3月17日以降、首都圏にある火力発電所でトラブルが発生、134万キロワットが停止した。そこへ、真冬並みの寒さが襲ったため需要の急増が予想される事態になった。

また悪天候で太陽光の発電量も大幅に減っていたため、電力不足が懸念されることとなり、警報発令に至ったわけだ。3月は地震など突発的な事象によって引き起こされた一時的な電力の需給逼迫だったが、その段階から構造的な火力発電所の「休廃止増加」が問題点として指摘されていた。

この時、突然「警報」が発令されたことが人々に混乱を引き起こしたとして、警報に至る前段階の「注意報」を新設。それが6月末に初めて発令されたのだった。

ハンディータイプの扇風機を自分の顔に向けている人
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火力発電所を維持することは採算に合わない

しかし、なぜ、電力が足りなくなる事態に直面しながら、大手電力は火力発電所を潰しているのか。皮肉なことに、太陽光など再生可能エネルギーの拡大が大きな引き金になっているのだ。2020年度では全体の発電量の19.8%が再生可能エネルギーに置き換わっている。これによって、火力発電所の稼働率が大きく低下。採算が悪化したため、大手電力会社が火力発電所を休止したり廃止しているのだ。

設備は稼働率が下がっても、運転のための作業員を減らせるわけではないし、保守点検などもフル稼働時と同様に必要になる。さらにロシアのウクライナ侵攻などもあり、LNGや原油価格が大きく上昇、さらに採算が悪化している。電力会社からすれば、再生可能エネルギーの調整役として火力を維持し続けるのは採算に合わないというわけだ。

さらに、今後も再生可能エネルギーの発電量は増える見通しで、2030年度には36~38%に達する計画だから、ますます火力発電所は不足時にだけ稼働が求められる調整役の色彩を強めることが分かっている。そんな火力を維持するという経営判断はできない、ということになるわけだ。

電力自由化の中で、火力発電所の休廃止については、国による許可制から届出制に変わっている。つまり、大手電力が決定して届け出ればそれで休廃止になってしまうわけだ。