景気が回復して受注が増えれば、材料を仕入れて製造に回す。すると、その過程で発生する棚卸資産が増えていく。そのこと自体はいいことだ。ただし、その先で頭痛の種が生まれる。

せっかく製品を納めて売り上げが計上できても、現金の入金までにはタイムラグが発生し、売掛金のままになってしまうのだ。その一方で材料費や社員の給与を支払わなくてはならない。そこで必要になるのが、つなぎ資金としての運転資金なのだ。

つまり、運転資金は事業が好回転しているときに不可欠なものといえ、CPがその運転資金の調達手段となっているのなら、「CPは収益アップに伴う積極的な負債」と評価できる。実際に各企業のCPの発行額が増加に転じると、好景気に入ったとみなされることが多い。

ただし、諸手をあげて歓迎ばかりはしていられない。昨年のCP発行額の増加については、震災による原発事故の関係で一部の電力会社が銀行からの融資を受けにくくなり、CPで資金調達したことが指摘されているからである。

確かに巨額の補償問題などで電力会社の長期借り入れの融資条件は極端に厳しい。一方、短期借り入れであるCPだと返済リスクは低く、機関投資家も応じやすいということで、一気に発行額を増やしたようなのだ。そうであるなら、積極的な負債とは位置付けがたい。

また、有利な資金調達手段とはいっても、やはりCPは短期での返済が必要な負債。その流動負債が大きいことは、短期的な支払い負担が増すことを意味する。「流動資産÷流動負債×100」の流動比率を200%以上確保しているのが、理想的な財務状況といえる。

(高橋晴美=構成 ライヴ・アート=図版作成)