コア・グループのメンバーは──ときには意識的に、ときには知らず知らずのうちに──意思決定に多大な影響を及ぼすため、権力の濫用や機能不全、あからさまな汚職が起こりうることも残念ながら事実である。

腐敗したコア・グループでは、メンバーが会社の成功とはなんら関係のない自身の報酬や特典を自ら大盤振る舞いすることがある。その一方で部下を虐待したり、気の弱さや効率の悪さ、全般的なアカウンタビリティの欠如を露呈したりすることもある。また、会社の長期的成功のために励むようにと他の人々を激励し、頼りになりそうに見えていながら、実は会社を食い物にしているという例もある。

そうした行動の結果、コア・グループのメンバーが1人2人とグループから追い出され、そのために会社をもっと前向きな方向に導く大きな力を失うこともある。

コア・グループのメンバーの行動がこれまで以上に重要になっているのはそのためだ。長期にわたって信用を維持し、利益を挙げる方向へと会社を導きたいと思うなら、コア・グループのメンバーは自分の権力を慎重に行使しなければならない。

だが、そのためにはどうすればよいのか。手軽な処方箋はない、とクライナーは認めている。

指導教育と自己認識、それにコア・グループの働きやその影響力の本質を単純認識することによって、コア・グループのメンバーは自分の立場を利用したいという誘惑に打ち勝つことができる。クライナーはさらに、コア・グループのメンバーは自分の信奉者が自分にその立場を与えてくれたのだということ──そして、それを奪うこともできるのだということ──を忘れてはならないと言う。この種の「組織の民主主義」はきわめてゆっくりと進行するため、当人が気づかないうちに状況が一変していることが多い。部下に小言ばかり言っている上司がいるとしよう。部下は上司に従っているように見えていながら、粘り強くやり通すとか、並以上の努力をするといったことをしなくなり、やがては上司の支配圏から抜け出していく。それはもちろん成果に悪影響を及ぼし、ひいては上司の影響力──上への影響力も、下への影響力も──を損なうことになる。

クライナーはさらに、コア・グループのメンバーは心理学者で経営コンサルタントのチャールズ・ハムデン=ターナーが打ち出した「増幅」という概念──コア・グループ・メンバーの発言や行為、ボディ・ランゲージが信奉者によって誇張されるプロセス──を忘れてはならない、とアドバイスする。「社員は、コア・グループ・メンバーの口には出さぬ本意を敏感にキャッチするものだ」と、彼は述べている。