スマホの充電器が出火原因か

「これは簡単な掃除で復旧できるような状況ではないな……」と、夫婦で途方に暮れていたところ、火元になった上階の住人が、管理会社の担当者と謝罪に来た。「本当に申し訳ありません」と、何度も何度も丁寧に謝罪する。

内心怒りもあったが、今後のことも考えると、許すほかない。

あとで保険会社の鑑定人も来るという。管理会社の担当者からは、「吉井様も火災保険を掛けていらっしゃれば、事故報告をして欲しい」と促される。

警察と消防によると、スマホの充電器から火が出た可能性があるとみて、詳しく原因を調べているという。近年、同様の火災が増えており、おそらくホコリなどで充電コネクタが発熱したのが原因ではないかという話だ。

たとえば非純正品の充電器などは、「異常温度対策」という電力供給をストップする機能が搭載されていない機器も多く、発熱によって怪我や事故、火災が発生することがあるのだという。

「損害賠償は請求できない」

そうこうしているうちに、火災保険の鑑定人がやって来た。

火災の消火活動による消火損害だが、「失火責任法」によって火元の上階には損害賠償は請求できないという。また、そうした際の補償に使える「類焼損害補償特約」も、上階の住人は付けていなかったという説明だ。

動揺成熟した夫は彼の妻とソファに座っています
写真=iStock.com/Andrii Zastrozhnov
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「このまま放置するとカビなどが発生するため、早急に対処が必要です」と鑑定人からは言われる。加えて、「被害写真を撮って、ご自身が掛けている火災保険会社に早急に事故報告をするように」と促されるだけだった。

ジェットコースターのような日々

すぐにアドバイス通り、保険会社に連絡して事故報告をした吉井夫婦。後日、原状回復のためリフォーム業者に依頼し、見積もりを取得した。

床の張り替え、壁紙の張り替え、電気工事、家電を含む家財などの修繕費用にあたる約200万円が、掛けていた火災保険からの保険金として補償されることになった。電気工事が含まれているのは、上階からの水漏れで漏電が発生し、スイッチやコンセント、漏電ブレーカーなどの交換が必要になったからだ。

保険金で補償されるとわかり、ホッとする吉井夫婦。

だが、よくよく考えてみれば、「専有部分も共用部分も綺麗で快適。買い替えしてよかったね」と喜んだのはつい最近のことだ。短期間に立て続けに、マンションの売却、購入、フルリノベーション、引っ越し、一時金の徴収、大規模修繕、火災……といったことが起こり、2人はすっかり疲れてしまった。