雪印乳業の食中毒事故で露呈した「牛乳の闇」

消費者の食料産業に対する不信感を高める事件が相次いでいる昨今であるが、中でも、2000年に起きた雪印乳業の集団食中毒事故(※)は、様々なことを我々に問いかけたので、振り返っておきたい。

※2000年6月27日、雪印乳業大阪工場で製造された「雪印低脂肪乳」を飲んだ子供が嘔吐おうとや下痢などの症状を呈し、1万3000人あまりの被害者が発生した集団食中毒事故

いかなる理由があっても、食品の安全管理に手落ちが生じることは許されないことが、まず大前提であるが、このような事故の背景には、飲用乳市場における競争の実態があることも見逃せない。

つまり、我が国のスーパーはスーパー間の競争においては「弱く」、激しい価格競争によって、消費者に牛乳価格を転嫁することが困難で(原料価格が高騰しても、消費者の購入価格には反映されにくい)あるが、乳業メーカーに対しては圧倒的な取引交渉力を持っていて「強い」ため、メーカーの価格転嫁を許さない(スーパーへの卸値を上げにくい)。

原材料の高騰のしわ寄せに苦しむ生産者の窮状を救うため、メーカーが酪農家に払う乳価を引き上げる場合もあるが、その場合は、メーカーが板挟みになり、赤字に苦しめられることになる。

当時、筆者はテレビ(日本テレビ「ザ・サンデー」2000年7月16日)・新聞・雑誌などで乳業の赤字構造を説明した。

図表1が、そのときに用いたフリップである。

【図表1】乳業メーカーの市販乳事業の赤字構造の模式図
資料=筆者作成
出所=『食の戦争

飲用乳業メーカーは、スーパーの取引交渉力の増大によって安い小売価格設定とそれに応じたメーカーの卸値の引下げを余儀なくされる。

一方で、酪農家に払う生産者乳価も引き下げてはいたが、それほど大きな生産者乳価の引下げも困難なため、大きなしわ寄せがメーカーに行く構造があったのである。

図表1では、飲用乳の製造原価が1リットル150円程度になるのに、スーパーへの卸値は144円程度で、1本6円程度の赤字が生じていた可能性が示されている。

もちろん、赤字になるからといって安全性確保の費用を削減して手抜きしていいということにはならない。

したがって、これは言い訳にはならないのであるが、このように一部にしわ寄せが蓄積するような市場構造の改善が必要であることは間違いない。

容器に入れられる生乳
写真=iStock.com/SimonSkafar
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