日本の食は本当に「世界一」なのだろうか。元農水官僚で、東京大学大学院の鈴木宣弘教授は「むしろ『安さ第一』となっている。たとえば牛乳では超高温殺菌ばかりで、アメリカ人なら顔をしかめるだろう。日本の牛乳は『刺身をゆでて食べる』ようなものだ」という――。(第1回)

※本稿は、鈴木宣弘『食の戦争』(文春新書)の一部を再編集したものです。

乳製品をアピールする金子農林水産相ら
写真=時事通信フォト
記者会見で「飲むヨーグルト」を飲んで乳製品の消費をアピールする金子原二郎農林水産相(中央)と、牛乳を飲む中村裕之(手前)、武部新両副大臣=2021年12月17日、東京・霞が関の同省

日本人は「食の安全」への危機意識が低い

食料の自由貿易化が推し進められる中で、とりわけ心配されるのが「食の安全」である。

日本人もいつのまにか“安さ第一”の消費者になってしまい、国産の食料を支えることが難しくなっている中、日本のフードシステムに関わる人々が根本的な意識改革をすることが急務なのではないだろうか。

農場から食卓に至るまでの食の安全を確保するシステム構築をしないと、子供たちや子孫の健康に大きな影響が出る可能性があるのではないかと危惧され始めている。

果たして、アメリカ主導ルールのもとで「食の安全」基準もグローバルスタンダード化されてよいのだろうか。

人の生命に直結する仕事に関わる使命を、もう一度大きく問い直してみる必要があるだろう。

なぜ、このようなことを考えるのかといえば、世界的に見ても食の安全性に対する日本人の危機意識の薄さを感じないではいられないからである。