「学校教育が変わらなければ社会はアップデートできない」
なぜこんなコースを作ったのか。工藤校長に話を聞くと、そこには「学校教育が変わらなければ社会はアップデートできない」という強い思いがありました。
一つの会社に就職して定年まで勤めるなんてほぼあり得ない時代を生きていく子供たち。しかも、今人類が抱えている問題は、ますますグローバル化し大きくなっています。環境問題も平和も、一つの国だけで解決できることはありません。
そんな中、教育改革は日本の学校だけの問題ではなく、世界共通の課題として考えられてきました。
その中で作られたのが、2030年のあるべき教育の姿を描いたOECD(経済協力開発機構)のラーニングフレームワークです。あまり知られていませんが、2020年から順次施行された日本の学習指導要領も、そういう流れの中で作られています。
日本の教育に欠けている「主体者となって行動する意思」
工藤校長は「SDGsに掲げられている地球上のさまざまな問題は、今人類が解決していかなくてはならない最上位の課題であり、世界人類共通の究極の目標が平和だとすれば、それを実現するためには何が必要なのかを、それぞれが主体者として考え、より良い社会を作っていくエージェンシーを持った人を育てることが教育の目的だ」と力説します。
さらに「課題を解決しようとすれば、当然対立やジレンマは起きる。だからこそ、対話する力が必要だ。しかし、日本は利害の対立を、心の教育で解決しようとしてきた」と続けます。いわゆる道徳教育ですね。
「OECDの学力調査の結果などから、日本の教育はまんざらでもないという人もいるが本当にそうだろうか?」と問う工藤校長が、日本の教育で一番欠けていると指摘するのが、エージェンシー、つまり、主体者となって社会のために行動しようとする意思です。
私も前々から、学校選びで最も大切なことは、その学校は何を教育の目的において、どんな人を育てようとしているのかを確認することだと伝えてきました。
そのため、工藤先生のお話には共感することばかりでした。