バナナとクレープに共通する儲かるポイント
クレープは、黒田の考えるビジネスの3つの要素を満たしていた。競合の少なさについては、一時期のクレープブームの名残りで残っている店はあるが、ほとんどが若者向けの生クリーム主体の味で、シンプルさを売りにした店はほとんどない。
生クリームやトッピングをほとんど使わないので、コスト管理も容易だ。クレープ生地が売りなので小麦粉とバターにこだわるが、これに砂糖を掛けるのがベースで原価率も高くない。設備として必要なのは、クレープを焼く機械だけだ。
作る過程もシンプルだ。クレープの生地を焼く作業は、一日あればアルバイトでもマスターできる。トッピングが少ないので、客を待たせることもない。
商品化に至るまでは、何日も試食を重ねた。粉は複数のブランド小麦粉をミックスして、独特のもっちり感が出るようにした。発酵バターを使っているので、深いコクが感じられる。
店を閉めてから作りはじめるので、食べるのはいつも深夜だ。メニューを考えながら作っていくので、一日に4、5枚食べることもある。黒田は一週間で5キロ太ったという。
クレープが生み出した相乗効果
2021年12月、黒田はクレープを売り出した。客の反応は上々だった。まだメニューは暫定的なものだが、一日20~30枚は出るし、仙川ではキャンペーンを打ったこともあって、60枚に達した。
クレープの魅力は利益率の高さだ。バナナジュースの原価率は25%程度まで引き下げたが、クレープはさらに低い15%程度だ。バナナジュースのすき間時間にスタッフが作るので、85%分の粗利益がそのまま残る。
一枚500円とすると、60枚出る週末はクレープだけで売り上げが3万円に達する。バナナジュースだけだと6万円程度なので、店の売り上げの3分の1はクレープだ。全店でフルに稼働すれば、夏場から落ち込んだ売り上げの半分程度を取り戻せる計算になる。
クレープを毎日食べる人はいないが、週に1~2回のスイーツニーズは強い。サラリーマンを中心としたプチぜいたくをターゲットにしていた。
問題はバナナをどう使うかだ。バナナジュース屋が提供するだけに、バナナを使ったクレープに対する期待は高い。クレープを食べることで、冬でもバナナジュースを飲むことに抵抗がなくなるような仕組みを作ることが理想だった。