吉良俊彦●きら・としひこ 1981年、上智大学卒業後、電通入社。メディア戦略など多数をプロデュース。2004年ターゲットメディアソリューションを設立。11年マンガデザイナーズラボを設立。現在、大阪芸術大学芸術学部キャラクター造形学科客員教授。著書に『1日2400時間吉良式発想法』『ターゲットメディア・トルネード』などがある。

破壊すべき「嘘」とは何か。著者の吉良俊彦氏は「高度経済成長期に生まれた、現代社会に対応しきれていない旧来型の常識や企業の構造、システムなど」だと述べる。本書は日本にはびこる「嘘」を破壊する。

かつての常識も、時が経てば非常識となりうる。本書の主張は「時代の流れの中で変化する常識を受け入れる、あるいは新しく常識を創り出す」というわかりやすいものである。

「私たちが故スティーブ・ジョブズ氏など自社の製品を自分の言葉で説明できる新時代の起業家に魅力を感じるのは、彼らが今までの常識を打ち破り、新しい常識や時代を創り出してきたからです。そして私は、それこそが今の時代を生きる人に最も必要なことだと伝えたい」と、吉良氏はあらゆる社会人、特に就活生を含めた次世代を担う若い人たちに「嘘」を破壊して新たな社会やシステムを創ってほしいとメッセージを送る。

破壊される「嘘」は誰もがどこかで聞いたことのあるものだったり、身に覚えのあることだったりする。「みんながやっているから自分もやる」という「嘘」。「話しているつもりで原稿を読む」という「嘘」。「代案を出さず否定するだけ」という「嘘」。

しかし、吉良氏は破壊のあとに生まれるコミュニケーションこそがより重要だと語る。そう、本書はコミュニケーションの本なのだ。そもそも執筆のきっかけとなった前著『1日2400時間吉良式発想法』に寄せられた村上龍氏の言葉で「嘘の破壊」がコミュニケーションスキルの一つとして定義されている。コミュニケーションは前著からの一貫したテーマなのである。新時代のよりよいコミュニケーションを創造するために「嘘の破壊」は不可欠だ。

また、本書には意欲的な試みとして「マンガデザイン」という新手法が採用されている。各章の要点をストーリーで繋いでマンガで描き、文章と違和感なく連動させているのだ。これは吉良氏が創り出そうとしている新時代のマンガの実例である。

「しおりを挟まずスピーディに、2時間で読みきれる本にしたかった。そのためマンガデザインを取り入れました。本書は漫画の常識にとらわれないチャレンジでもあるのですが、これからマンガデザインの時代が来ると確信しています」と語る言葉とまなざしは力強く頼もしい。

吉良氏が設立した「マンガデザイナーズラボ」は、書籍をはじめ、広告などさまざまなメディアにマンガデザインを導入し始めている。

(鷹尾 茂=撮影)