成功において、本人の能力が占めるのは「1、2割」

日本には「努力至上主義」ともいえるイデオロギーが根深く残っています。私は、この考え方が逆に、企業の成長や人の能力発揮の足を引っ張っていると常々感じています。

残念ながら、仕事の成功は「環境」と「タイミング」でほぼ決まります。本人の能力が影響するのは、せいぜい1割、よくて2割ほどでしょう。

たとえば、平均的な能力を持つ人に最高のスペックを持つパソコンを渡した場合と、優秀な能力を持つ人に10年前のスペックのパソコンを渡した場合、どちらが仕事の成果を出しやすいかといえば、当然ながら前者であることは明白です。

事業にしても、たとえば日本の飲食店の質の高さは世界的に有名ですが、これは参入規制が比較的厳しくなく、多様な人がチャレンジする土壌があるためです。逆に、通信事業や電力事業に関しては厳しい規制があるため、巨大資本を持つソフトバンクグループや楽天グループでさえ、新規参入時にたいへんな苦労をしています。

「半歩先がベストタイミング」

また、あらゆるニーズの高まりには山があり、求められ始めてぐんぐん伸びる時期と、徐々に下降する時期がやってきます。

よくいわれるのは「半歩先がベストタイミング」というもので、早過ぎては理解されなくてダメ、遅過ぎてもすでに行き渡っているからダメ。誰もがイメージしやすく、供給よりも需要が多い時期、つまり「人よりちょっと先がいい」という意味です。

たとえば、私は3年前にYouTubeを始めました。1年ほどは撮影方法や動画時間、取り上げる内容について試行錯誤をしていました。徐々にベストな方法が分かってきて、チャンネル登録者数がどんどん増え始めたころに、やってきたのがコロナでした。

その影響で、芸能人や有識者たちが一斉に参入してきたので、もし私が今始めていたら、新規参入の大波の中に埋もれてしまっていたかもしれません。意図せず、まさしく半歩先にスタートすることができたわけです。

自分の周りにいる5人の平均値が自分の実力

同じように、コロナ禍における巣ごもり需要で急激に業績を伸ばしたEC事業や動画配信のサブスクリプションサービス事業などは、環境とタイミングの波に乗って大成功を収めた好例だといえるでしょう。

環境とタイミングがピタリとハマれば、最小の労力で最大の効果を出すことは可能です。しかも、驚くほど簡単に。

自己啓発をしたり、意志力を高めたりといった「自分磨き」も決して無駄なものではありませんが、それより重要なのは、環境整備とタイミングの見極めなのです。

社内でも、どんなに頑張って努力をしても、ほかのメンバーが努力嫌いで怠けていたら業績を伸ばすことは不可能でしょう。

「自分の周りにいる5人の平均値が自分になる」ともよくいわれます。どこでどんな人に囲まれて仕事をするかに強く影響を受けるということは、知っておくべきでしょう。