名物の夜鳴きそばは「触れ合いの場の提供」だった

ドーミーインならではのサービスとして定着している夜鳴きそば。夜遅めの時間帯に宿泊者に無料で振舞われる温かいラーメンは、心と体に染みる味わいである。

ワニブックスNewsCrunch編集部『Have a nice ドーミーイン 「一泊すると住みたくなる」最高のビジネスホテル』(ワニブックスPLUS新書)
ワニブックスNewsCrunch編集部『Have a nice ドーミーイン 「一泊すると住みたくなる」最高のビジネスホテル』(ワニブックスPLUS新書)

「これは創業者のこだわりから生まれたサービスです。今やさまざまなお客さまにご利用いただくようになったドーミーインですが、もともとは出張するビジネスマンのためのホテルでした。仕事を終えてホテルに戻っても、部屋にこもったままおひとりで過ごすのが以前のパターンでした。そこで簡単なお夜食を提供することで、“部屋を出て、スタッフやそこに居合わせた人々と、ほんのひと時でも会話を楽しむきっかけになるのでは?” と私たちは考えたのです」

「つまり、食事そのものというより、人と人とのふれあいの“場”の提供です。その夜食という提供シーンに合うメニューとして考えられたのが、万人に受け入れられるラーメン、すなわち“夜鳴きそば”でした。ドーミーインの夜鳴きそばの提供の裏には、そんな想いがあったのです」

量や具材のひとつひとつに細かな配慮が

「味にもこだわりがありまして、ずっと変わらないと思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、日々、よりよいものになるよう考えています。極端な話をすれば“本当にしょうゆ味でいいのか”という論議もよくしています。昔からご利用している方ならおわかりになると思うんですが、過去にはチャーシューが乗っていたこともありますし、夜鳴きそばと一緒にまぜごはんを提供していたこともあったんですよ」

「ただ、本来は夜遅い時間に召し上がっていただくもので、あくまでも小腹が空いてしまった方のためのサービスです。これにも理由があって、当社ではリゾートホテルも運営しており、レストランで夕食を提供するのですが、早めに夕食を済ませてしまった方はどうしても深夜に小腹が空きますし、街中にあるホテルと違って、近くに飲食店があるわけでもないので、じゃあ、レストランの厨房を使って夜鳴きそばを提供しましょう、ということになったんです」

「つまり、夜食ですから、翌日に響かないように、麺は半玉、スープはあっさり、具材のほうもメンマ、のり、ネギといったものに変えていきました。ただ、ひとつひとつの具材、それこそ麺からこだわって開発していますし、全体のバランスもしっかりと考えた上で提供させていただいているのが現在の夜鳴きそばです。そして現在、夜鳴きそばは、ビジネスマンだけではなく、小さなお子様連れのご家族から海外のお客さままで、文字どおり万人に愛されるドーミーインの名物へと進化しました」