「投げちゃダメでしょ」だけでは説明不足

物を投げたり壊したりしたとき
✕ 投げちゃダメでしょ! こんな大事なもの壊しちゃダメでしょ!
◯ 投げると人に当たって怪我させるかもしれないから、絶対に投げないでね。/壊れちゃったね。物は壊れるものだから、気にしなくても大丈夫

子どもは、人に物を渡すときに投げるんですよね。だから私は、子どもが物を投げたときには、毎回、「投げると人に当たって怪我させるかもしれないから、絶対に投げないでね」と理由を言って注意しました。投げるものによって、「尖ったところが相手に当たると、怪我するよ」とか、「積木は硬いから、当たるとかなり痛いよ」とその都度説明していました。ときには、「投げると勢いがついて、相手に届くときにはスピードが増しているから危ないよ」と注意することもありました。私は基本的に、子どもがしたいことを何でもさせていましたが、危険が伴うことは、うるさく注意していました。

母親の手にのせた積み木をつかむ子供
写真=iStock.com/Alexander_Tarassov
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何も理由を言わずに、単に「投げちゃダメでしょ!」と怒るのはNGです。叱るときには必ず、してはいけない理由を説明しましょう。そうすると、子どもも危険なことがわかって次第に投げなくなるはずです。

祖母の思い出の皿を壊したときに言われた言葉

物を壊したときに、「壊しちゃダメでしょ!」と叱るのもNGです。物は壊れてしまうものだからです。子どもが壊してしまうものとして多いのは、お皿などの食器だと思います。

私自身、5歳ぐらいのときに、父方の祖母が大切にしていた手描きで椿の花が描かれた10枚セットのお皿のうち4枚を割ってしまったことがあります。母がお皿を箱から出して磨いているときに、横を通りかかった私の手が滑って、持っていたコップを運悪くお皿の上に落としてしまったのです。母はお皿が割れた瞬間、はっと息を飲みましたが、私のことを叱りませんでした。祖母はその前年に亡くなっていたのですが、私をとても可愛がってくれていました。母は、「あなたが割ったんだったら、おばあちゃんも怒らないよ。形あるものは壊れるから、大丈夫。壊れないと陶器屋さんがお皿が売れなくて困るよね」と言ってくれました。割った私もびっくりして呆然としていたのですが、その母の言葉に救われましたね。

長男が2歳のとき、お手伝いのつもりで飲み終わったマグカップをキッチンに持っていきました。まだ長男の身長が小さくてシンクのなかが見えないので、手を上に伸ばしてカップをポトンと落とすのです。本人は片付けているつもりなのですが、シンクのなかにはすでにお皿が何枚かあったのでカップもお皿も割れてしまいました。長男はお手伝いのつもりだったので、母が私を叱らなかったのと同じように、私も長男に「割れちゃったね」と言っただけで、叱りませんでした。