「3.11福島原発事故」から1年。相変わらず原子炉内部では頻繁に異常が発生し、現場作業も遅々として進んでいない。事故収束にはほど遠い情況だ。
国内各地の空間線量測定値は事故後、一様に上がっており、陸海空に拡散する放射性物質は今も汚染地域・海域を広げつつある。また、汚染された「食」は、政府が画策した“底上げ規制値”以下という手掛かりだけを頼りに全国で流通している。もはや、汚染地域は福島とその周辺だけではない。日本全国が“事故現場”となってしまったのだ。
福島県の定時降下物測定値を昨年3月まで遡ると、事故直後に降り注いだ大量の放射性核種は昨秋までにいったん落ち着いていたにも関わらず、今年1月には400ベクレル超、2月も350ベクレルという高い数値が検出されている。いずれも放射性セシウム134と同137が中心だ。日常生活でセシウム被曝が恒常化してしまったということである。
と同時に、原子炉内部の異常が続いている。2月には2号機圧力容器温度計の値が急上昇。東電は「計器の故障」と説明したが、その後もたびたび異常な温度上昇が続く。3月に入っても圧力容器底部で温度計の1つが異常な数値を示した。これに対して東電は、驚くべきことに「計器故障の可能性があるため監視対象から外した」と発表した。
危険を監視するために設置した計器が異常温度を報知すれば、まずは状態を確認する。異常な環境だからこそ計器が故障し続けているかもしれず、実は温度が異常で計器は正常である可能性も高いからだ。これを不明にしたまま納得できる説明もせず「監視対象から外す」との発表に、多くの国民が不審を抱いた。
つまり、事故後1年が経過した今もなお、国民は政府や東電に対して、情報隠蔽やデータ改竄を続けているのではないかとの疑惑を払拭できずにいるということだ。事故責任を問われるべき東電幹部や関係官僚は誰一人として断罪されず、被害者の生活をズタズタにしておきながら補償を渋る東電と金融機関は国庫で救済され、財源には国民の新たな税金が充てられる。危険は広がる一方だ。事態は好転せず、問題は何も解決していない。