共同声明の実現にかかる血税2兆円

海兵隊グアム移転の予算は、米議会で採決される。米議会に詳しい沖縄国際大学の佐藤学教授は、今後の対米交渉に必要なのは「現実的な選択」だという。

09年10月、国防予算の大枠を決める2010会計年度国防権限法が成立。沖縄海兵隊のグアム移転費が盛り込まれていた。(ロイター/AFLO=写真)

「筋論だけでいえば、沖縄に基地新設はせず、老朽化で危険度がさらに増した普天間基地の継続使用をやめて、嘉手納は継続使用。もし普天間を返還しなければ、嘉手納反対の地元世論に火がつくぞ、と。本来なら政府が『抑止力』論の是非を明確にして筋論を米側に提示し、オバマ大統領にそれを受け入れさせるべきなのですが、いまとなっては無理です。金で解決するしか道はないと思います」

筋論を放棄すれば、日本外交のブレは止まらず、沖縄は負担軽減の機会を失う懸念もある。しかし、辺野古に基地を造らずに普天間を返還させるため「金での解決」を佐藤教授が提示するのは、グアム予算の承認を渋る米議会の実情を熟知しているからである。

米軍再編に伴う経費は日米いずれにとっても財政に重くのしかかっている。グアム移転経費の試算総額は現在、103億ドル。日米が6対4の分担で共同負担することになっている。日本側は09年5月、当時の自民党政権が野党の反対を押し切って早々と負担額61億ドルの拠出を国会で承認した。

ところが、当の米国では現在もまだ、米側負担分の40億ドルを議会が承認していない。米上院軍事委員会は2011年会計年度(10年10月~11年9月)の国防権限法案の採決で、海兵隊グアム移転費の政府原案4億2700万ドル中、7割(約3億ドル)を削減して法案を可決していたことが6月初旬の新聞各紙で報じられた。政府原案は米側負担分のごく一部にすぎないにもかかわらず、だ。