「ポツダム宣言受諾」の本当の意味

2022年にウクライナに侵略攻撃を仕掛けたプーチン大統領は、世界でただ一人この戦争を止める決断ができる人物だが、今のところ妥協する気配はない。だが、苦境に陥り、完全な勝利ではないところで妥協を図るのであれば、それは重要局面である。ウクライナ政府も合意できる形で停戦合意が締結できるのであれば、プーチン大統領の妥協は歓迎されるだろう。

しかし、後日になってプーチン大統領が、ウクライナ軍の大攻勢による強い軍事的圧迫でやむなく締結しただけだからあの停戦合意は無効だ、と言い始めたら、どうだろう。その無責任さに、一層強い非難が巻き起こるだけだろう。そして実質的な安全保障措置を伴った仕組みの裏付けがなければ、安易な合意はかえって危険だと痛感されるだろう。

日本国とポツダム宣言の関係も、同じである。日本は、太平洋戦争において、先に武力行使をした攻撃者側である。アメリカのほうが、自衛権を発動した側である。もちろん自衛権行使の論理だけでは、原爆投下や一般市民への戦略爆撃は正当化されない。それは国際人道法の観点からの審査すべき事柄である。ただ、いずれにせよ、アメリカはポツダム宣言と称される一連の要求を日本が受け入れる場合には、攻撃を停止する、という立場を表明した。日本は、熟慮の後に、これを受諾することを、決定した。日本は主権国家として、ポツダム宣言を履行する国際的責務を負った。

日本と連合国が共に負った「平和国家建設」の義務

ポツダム宣言の受諾によって、大日本帝国軍の完全な武装解除、「言論、宗教及思想ノ自由ならびニ基本的人権ノ尊重」の確立、「国民ノ自由ニ表明セル意思ニ従ヒ平和的傾向ヲ有シかつ責任アル政府」の樹立が、日本国と連合国の間で約束された。連合国は、これらの「基本的目的」を確実に達成するために占領統治を行うが、目的が達成された暁には「聯合国ノ占領軍ハ直ニ日本国ヨリ撤収セラルヘシ」ということも定められた。

日本では、ポツダム宣言の受諾を「無条件降伏」とのみ描写することが多いが、これは正確ではない。確かにその内容は、特異な環境においてのみ起こりえた特異なものである。しかし実際のポツダム宣言においては、「日本国政府カ直ニ全日本国軍隊ノ無条件降伏ヲ宣言シ」とあるように、「無条件降伏」するのはあくまでも「軍隊」である。

ポツダム宣言の全体は、戦争後の日本において、民主的で平和的な国家を建設するプロセスの基本的方向性を示すものであった。そして、日本と共に連合国側も、同じように誠実にポツダム宣言を履行する義務を負ったのである。